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2022.03.27

コロナ禍で爆発した米国の大麻・ギャンブル・ポルノの需要

Getty Images

パンデミックの余波で、米国では大麻やギャンブル、そしてポルノ関連のビジネスがかつてない活況を呈している。

2020年3月13日、シカゴのサプライチェーン企業でマネージャーを務める35歳のダグの暮らしは一変した。勤務先が無期限でオフィスを閉鎖することを決定したからだ。株式市場は急落し、彼の家族も新型コロナウイルスにかかり、4児の父である彼は購入したばかりの自宅で将来を心配していた。

ダグは、それまで毎晩グラス1杯のワインを飲んでいたが、ボトル1本を空けるようになり、THC(大麻のハイになる成分)が入ったグミを食べるようになった。そして、スポーツイベントが再開されると、ギャンブルで気を紛らわせることも増えた。

彼のような人は、米国人は決して珍しくはない。2020年3月、自宅待機命令が国中を駆け巡ったとき、アメリカ人は恐怖や不安に対処するために、大麻でハイになり、アルコールで酔っぱらい、ポルノに走った。バッファロー大学が行った調査によると、ロックダウンの最初の月に13の州でアルコールの売上が10%以上急増し、ワインの売上は9%近く跳ね上がったという。また、米国では2020年に20年ぶりにタバコの販売本数が増加した。

合法化で急成長の大麻業界


パンデミックは人々の命を脅かし、世界経済を停滞させたが、同時に大麻業界に成長をもたらした。全米でロックダウンが実施される中、多くの州で大麻の認定販売所は薬局や食料品店などと並んで営業を継続できる「エッセンシャルビジネス」に区分けされた。

2020年の大統領選挙の当日に、5つの州で大麻の合法化が可決され、合法大麻業界は空前の盛り上がりを見せた。合法大麻の年間売上高は175億ドル(約2.1兆円)を超え、パンデミック前の2019年に比べて46%増を記録した。

さらに、長年の大麻の愛好家の多くがグミやキャンディーなどのエディブルに切り替えた。シアトルに拠点を置く調査会社ヘッドセットによると、2020年には、カリフォルニア、コロラド、ミシガン、ネバダ、オレゴン、ワシントンの6州でエディブルの売上が54%増加した。

オレゴン州に拠点を置くエディブルのメーカーWyldの共同創業者のアーロン・モリスは、「パンデミックは大麻産業を10年進めた。大麻はアルコールと並ぶ主流の嗜好品になった」と話す。

モリスによると、Wyldの売上は20%急増し、その後も成長は鈍化していないという。同社の売上が変動するのは、景気刺激策の現金給付が途切れた時だけだ。「政府が小切手を発行するたびに、売上は30日間ステロイド状態になった」と彼は話す。

2019年のWyldの売上は2500万ドルだったが、2020年末までに同社のフルーツグミの売上は6400万ドルに達した。そして、昨年末に同社の年間売上は1億1000万ドルを突破した。

2021年の米国における大麻の年間売上高は250億ドルに達し、2020年から43%増えた。エディブルが成長している一方で、マリファナの売り上げも伸びている。大麻関連の投資ファンド「ポセイドン」の共同創業者エミリー・パクシアによると、カリフォルニア州、コロラド州、ミシガン州、ネバダ州、オレゴン州、ワシントン州で、2020年4月から2021年10月にかけてジョイントの売上が47%も急増したという。

パクシアは、この動きの背後にある種のニヒリズムがあると考えている。「私たちの生き方の時間軸は短くなった。5年後や10年後のことを悩むのではなく、今をしっかり生きればいいと考える人が増えた」と彼女は語った。
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翻訳・編集=フォーブスジャパン編集部

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