エナムによると、新たに調達した資金は、顧客との会話からより多くの知見を得るための機能開発に充当するという。「例えば、“そのセールストークは響かない”とか、“競合他社はもっと効果的で安価なソリューションを提供している”、といったことを顧客企業に伝えるための機能だ」とエナムは言う。
現在、Crestaの社員数は150名で、今後さらに人員を増強する予定だ。昨年8月には、グーグルのコンタクトセンター向けAI事業の創設者を開発部門の責任者として採用した。このことや、スランの経歴も手伝い、グーグルのエンジニアの多くがCrestaへの転職を希望しており、昨秋以降に30名を採用したという。
ブームに沸くAIコールセンター
今後、Crestaがコールセンター業界のユニコーン企業と対抗する上で、今回調達した資金は重要な役割を果たす。競合のGongは営業チームに直接製品を販売しており、TalkdeskやDialpad、ASAPPはカスタマーサービス向けにAIソリューションを提供している。
また、インド発のUniphoreは先月、業界では最大規模となる4億ドルの資金調達を行い、製品群の拡充を図っており、売上高が1億ドルに近づいていると述べている。
「今後はAIを活用してコールセンター事業に参入する企業が続々と出てくるだろう」とセコイアのパートナーで、Cresta の取締役でもあるCarl Eschenbachは話す。エナムは、2つの点でCrestaはライバルに勝ると考えている。
他社の多くは、AIを使って人間が行っていた単純作業を自動化しているが、このようなAIは、Crestaのように顧客担当や営業担当者をリアルタイムで支援することには弱い。また、一部のスタートアップは、既存のインフラを自社製品に置き換える、プラットフォーム的なアプローチをとっている。
しかし、インフラをまるごと入れ替えることを嫌がるユーザーにとっては、インフラの上位レイヤーとして機能するCrestaの方が適している。
エナムは、出資者選びも自社が優位に立つために重要だと考えており、フィンテック大手のストライプを参考にしているという。Yコンビネータ出身のストライプは、Yコンビネータのネットワークを活用し、資金調達や製品の導入を優位に進めた。同社の競合のBoltの元CEO、Ryan Breslowは、不利な競争を強いられたとしてストライプを批判して物議を醸した。しかし、エナムはストライプの手法は正当な戦略であり、彼が運営するCrestaも同じ理由からセコイアやアンドリーセン・ホロウィッツのようなトップVCから資金を調達したという。
「会社を設立した当初から、彼らのような企業を取り込むことに注力してきた。資本市場から勝者に選ばれることで、自社を成功に導くことができるからだ」と彼は述べた。