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2022.03.26

人に寄り添う政策へ。経産省が推進するデザインプロジェクト「JAPAN+D」とは?


デザインのある未来とデザインのない未来…ぶれない軸は、「人に寄り添う、やさしい政策」


トークセッション3では、「人にやさしい行政へー日本の行政をアクセラレートするデザインー」として、前述のKESIKI INC.石川俊祐がモデレーターに。2018年から三菱UFJグループに於いてデザインチームの組成等の組織デザインに従事し、昨年、デジタル庁のチーフデザインオフィサーに就任した浅沼尚は、「大手企業のインハウスデザインと、デザインコンサルティングのノウハウをこのプロジェクトでも充分に活かせるのではないかと思います」と語る。デザインという考え方を「『道具』として使っていくことが大切だが、日本の行政の中でどういうアクションを取っていけば良いか」と課題を述べた。

「デザイン経営宣言」の発出にも関わったTakram代表の田川欣哉が、具体例を挙げる。「身近な問題でしたら、コロナ給付金。提出書類にデザインスキルのある人がいたならば、もっと書類が分かりやすくユーザーに優しくなるのでは。でも、デザインだけでなく、サステナブルやデジタルの要素を加える事で、より強い政策になるのではないでしょうか」



そして、このトークセッションのラストを飾るのが、経済産業省の飯田祐二。「このプロジェクトでは、私は最年長なのではないでしょうか?」とユーモアを交えつつも、官房長を務める飯田は、DXを活用した省内の働き方改革や人事戦略に従事してきたなか、資源エネルギー庁次長として「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けて尽力する等、幅広い分野に精通。そんな飯田が考える政策デザインとは?

「私自身、まず、デザインのある未来と、デザインのない未来を比較してみました。次にどうやって価値を生んでいくか?どういうニーズがあるのか?そして何より大切なのは、日本の組織が適用出来るのか? それらを総合的に考えた結果、行政こそデザイン的な考え方をしなくてはいけない、という結論になりました。ぶれてはいけない軸は、人に寄り添う優しい政策かどうか? という一点だと思います」



ごくごく当たり前に「政策デザイン」が浸透する事とは暮らしやすい社会が実現すること


一見、漠然と見える「政策デザイン」とは、例えば、行政の企業向けの支援情報サイトで、人々が普段使うようなキーワード(DX、人材等)で、ごく当たり前に欲しい情報を検索出来るようになる事であったり、ひとつの政策を考える時の資料を、市民と一緒に考えて創っていく事かも知れない。海外や国内のリサーチを鑑みながら、これからの活動に繋げていくため、「政策づくり」「組織づくり」「仲間づくり」の3つを推進していくとイベントの最後に宣言したのが近畿経済産業局・製造産業課の沼本和輝。

2022年春、パブリックセクターチームによってスタートしたばかりの「JAPAN+D」。3年後5年後、あるいは10年後に、当たり前に「政策デザイン」が生活に浸透していく社会へ。ユーザーとなる私達も「自分ごと」として今後も注視していきたい。

取材・文=中村麻美

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