政策デザインを20年前から導入している先進国デンマークからのメッセージ
JAPAN+Dでは、デザインアプローチを取り入れた政策づくりの事を「政策デザイン」と呼ぶ。デンマークは、20年前から政策デザインを導入してきた、いわば政策デザインの先進国。冒頭では、Danish Design CentreのCEOクリスチャン・ベイソンからのビデオメッセージが流れた。前職では、デンマーク政府の児童教育省と雇用省と経済成長省の3省庁が共同設置したフューチャーセンター「Mindlab」代表を務めた経緯を持ち、著書に「Design for Policy」「Leading Public Sector Innovation」などがある、政策デザインの第一人者でもある。
「政策は、国だけが主導して行なうものではなく、国民との繋がりが最も大切です。政策だからと、官だけが主導を取って進めるのではなく、民間ともお互いに協力し合って実践していく事で、より深く浸透していく事でしょう。また、一度に大きなプロジェクトを掲げるのではなく、小規模な実験を通して柔軟に活動をしていく。そうすれば、軌道修正する事もスムーズに運び、国民の声も見えてくると思います」と、活きたアドバイスが寄せられた。
「シンプル」「ヒューマン」「謙虚」でもっと良くなる日本の行政
続いて行われたトークセッション1では、「もっと良くなる! 日本の行政-Human Centered Designの視点から考える政策立案プロセスの可能性─」をテーマに議論。モデレーターを務めたのは「PRESIDENT」や「Forbes JAPAN」ウェブ編集長時代に、国内外の起業家やクリエイター取材の経験を数多くこなしてきた「KESIKI INC.」の九法祟雄。「世界を変えるデザイナー39」や「30 UNDER 30 JAPAN」を立ち上げた、時代を先読みする識者でもある。
「官庁や企業のブランディングにも関わってきました。パーパスやミッション、ビジョン、バリューの策定に携わった経験から、パネリストの皆さんに、『デザインの力で日本の行政を変える』意気込みを伺いたいと思います」
経済産業所研究所「RIETI」西垣淳子は、「ものづくり政策やクリエイティブ産業、また、小規模企業振興の業務を通して、デザイン経営に取り組んで参りました。経産省・特許庁が行った『デザイン経営宣言』を通して、政策にデザインアプローチをする事の必要性を実感しています」と言う西垣は、特許庁審査業務部長時代に、特許庁のデザイン経営プロジェクトを推進してきた貴重な経験も持つ。
ところが、「図らずも、仕事ではデザイン経営に取り組んで参りましたが、本当の意味で、政策デザインの必要性を感じたのは、3人の子育てを通してでした。役所に提出する手続き等の面倒な申請を、利用する側からの立場で、何を取り入れたらスムーズにいくか。つまり人に優しいかが、このプロジェクトの要だと考えています」