話題の「ガチ中華」。その種類別に人気店を分類してみた

中国で親しまれる小吃(軽食)。「煎餅果子」は屋台メニューだが、大久保に専門店もできた。


店名が「廃屋」の意味を持つ「破店 Broken Shop Sweet and Spicy」の内装は、レトロ趣味を前面に打ち出しながら、ポップな要素も取り込んだユニークなデザインなのだが、脱力モードとでもいうのか、店員のユニフォームまで意図的に野暮ったくしているのが特徴だ。過度な競争社会に背を向ける「横たわり族(躺平族)」と呼ばれる新手のニートが増えているとされる、いまの中国の若い世代の気分を反映しているのだろうか。

(2)中国の人気外食チェーン
2つ目のジャンルは、すでに本コラムでも紹介した「中国の人気外食チェーン」 で、麻辣燙(マーラータン)専門店の「楊国福(ヨウゴクフク)」や、数々のこだわりのサービスと京劇パフォーマンスなどの趣向を凝らしたエンタメで知られる火鍋チェーンの「海底撈(ハイディーラオ)」などで、都内で多店舗展開をしている。

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「海底撈」では京劇の衣装で仮面を七変化させるショーがある

人気外食チェーンのニュータイプとしては、中国の人気俳優の陳赫(チェン・フー)がプロデュースする高田馬場の火鍋チェーン「賢合庄(けんごうしょう)」や、「米線(ミーシェン)」と呼ばれる雲南省のライスヌードルを提供する「阿香米線(アーシャンミーシェン)」などがある。

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 「賢合庄」の入口には陳赫さんの等身大キャラクター人形が置かれている

これらの外食チェーンは日本だけでなく、北米やオーストラリア、東南アジア各地にも出店している。いま東京で起きている新たな食のシーンは、日本に特有なのではなく、ワールドワイドに、同時的に見られるものなのである。

(3)ジャンク小吃&麻辣進化系
カモの首の煮物である「鴨脖(ヤーボゥ)」やザリガニ(小龍蝦)料理のようなジャンクな軽食である小吃(シャオチー)を出す店も増えている。鴨脖なら都内に多店舗展開している「周黒鴨大夫人(ジョウヘイヤーダーフーレン)」で味わえるし、ザリガニ料理なら高田馬場の早稲田通り沿いに専門店の「蝦道(シャドウ)」がある。

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「周黒鴨大夫人」のジャンクなメニューはこんなにたくさんある

これら日本人からするとかなり抵抗のある小吃は、早朝から夜遅くまで受験勉強に明け暮れる中国の若い世代にとっては、小腹を満たす身近な軽食だった。中国の経済成長が軌道に乗った2000年代に、刺激の強い四川料理として全土に広まり、その麻辣風味はさまざまな料理へと進化していく。

たとえば、汁なし麻辣鍋の「麻辣香鍋(マーラーシャングオ)」や、串に刺した食材を麻辣スープにひたして食べる「串串香(ツァンツァンシャン)」は、四川火鍋に端を発する麻辣料理の進化系といえる。

いずれも冷凍ケースに並べた食材を客が選んで調理してもらうというスタイルが特徴で、いまどきの好みにうるさい中国の若い世代向きでもある。本場の辛さや痺れに慣れていない日本人には、火鍋に比べてこちらのほうが食べやすい気もする。
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文=中村正人 写真=東京ディープチャイナ研究会(佐々木遼、山端拓哉)

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