三浦知良55歳。自然体の挑戦がもたらす、あまりに大きな影響力

カズの鈴鹿入団会見の様子。左は鈴鹿の監督を務める兄の三浦泰年/photo by 鈴鹿ポイントゲッターズ


「みなさんのお目当てはカズさんだったはずですけど、ウチにはカズさんだけじゃないんだよ、というのを今日の試合で示せたと思っています」
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ダメ押し点を豪快なミドルシュートで決めたのはDF菊島卓。国士舘大卒業後はJFLのひとつ下、地域リーグでプレーした経験を持つ28歳も笑顔で三宅に続いた。

「こんなにお客さんが入ったなかで試合をしたのは初めてです!」

星稜高で本田圭佑と、明治大では長友佑都とチームメイトだった35歳のキャプテン、MF橋本晃司は開幕戦で配布されたプログラム内でカズについてこう言及している。
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「子どものころから憧れて、ヒーローだった人がチームメイトになっている。夢のようですし、喜びもありますが、責任も感じます。中盤でプレーする以上、カズさんにアシストできるように、いいパスを供給していきます」

いまはまだ遠慮というか、ちょっとした距離感があるかもしれない。それでもカズをして「みんなが受け入れてくれている。そこは大きいですよね」と周囲へ感謝させる鈴鹿で化学反応が起こりつつあると、三浦監督は早くも感じている。

「大観衆が背中を押してくれたという意味で、カズが鈴鹿に来た影響は非常に大きい。そのなかで開幕戦のために、カズが積んできた努力や準備にも感謝している。カズがそういう姿勢を見せることで、他の選手たちが成長していくと思っている」

大好きなサッカーだけは裏切りたくない。こう誓い続けるカズは、日々のトレーニングやその前後に時間をたっぷりかけて行う身体へのケア、あるいは徹底すぎる食事管理などを介して、ストイックで真摯な姿勢を貫いてきた。

横浜FC時代に続いて、周囲を惹きつけ、感化させ、雰囲気を含めたチーム全体を変えていくのはもうちょっと先になるだろう。しかし、カズ自身、サッカーの伝道師のような役割を担いうるだけで終えるつもりはもちろんない。

可能な限り長くピッチに立ち、フォワードの存在価値、すなわちゴールを追い求める。2-4で敗れた岡崎戦では前半10分、左サイドからのクロスに左足を一閃。押さえつけるように放たれた一撃はしかし、相手キーパーの正面を突いてしまった。

鈴鹿で放った初めてのシュートを、カズは無念そうにこう振り返っている。

「ジャストミートできたんですけどね。決めたかったな、と思っています」

自身が決めた最後のゴールは、2017年3月12日のザスパクサツ群馬戦までさかのぼる。そのときは周囲に横浜FCのチームメイトたちが何人も集まったピッチの上で、カズを中心に笑顔で「カズダンス」を舞っている。

腰をくねらせ、軽やかにステップを踏みながら左手を股間あたりにあて、最後は右手の人さし指を空へ突きあげて笑う。いつしか「カズダンス」と命名されたゴールパフォーマンスを、カズは戦いの場をJ2へ求めた17年前にこう語っていた。

「小学生の子どもたちが、僕にカズダンスをリクエストしてくる。おそらく見たこともないはずだけど、親御さんたちから教えられたんでしょうね。ゴールした喜びを表現する僕の姿をみんなが求めている。だからこそ、いまはプレーしていて本当に楽しい」

観客を喜ばせるのもまた、プロに求められる仕事。5年あまりの空白を埋め、MF永井秀樹がFC琉球でプレーした2013年に決めた、42歳50日のJFL最年長ゴールを更新する一撃を誰よりもカズが待ち焦がれている。

カズの背中

ホームの三重交通Gスポーツの杜鈴鹿で27日に予定されていた第3節は、対戦相手のクリアソン新宿で新型コロナのクラスターが発生したために延期となった。

次なる戦いは4月3日の東京武蔵野ユナイテッドFC戦。どれだけ肌寒くても絶対に欠かさない不撓不屈の魂を象徴する半袖のユニフォームに身を通しピッチに立つ姿をひと目見ようと、敵地の武蔵野市立陸上競技場が再びフィーバーに包まれる。

文=藤江直人

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