ビジネス

2022.03.24

バーティカルフィンテックでフリーランスを救う


阪井:ただ、起業した当初は苦しかった。サービスをリリースすると、すぐに数千万円ほどの申し込みが来て、ニーズの大きさを実感した半面、キャッシュを回していくのは大変で。20年に約1.3億円の資金調達をして、少しは楽になるかと思っていましたが、違いました。

21年に服部さんのリード投資で4.5億円の調達をして、ようやく落ち着いてビジネスができる状況になってきました。

服部:外部の人たちからは、「このビジネスってもうかるの?」「どこまでも資金調達が必要じゃん」と言われることがありますよね。ただ、まだシリーズAに向かうフェーズなので、調達した資金を本業に使うこともあるし、成長資金として採用や開発に使うこともある。いまの段階でもうからないと決めつけるのは早計です。

フリーランスの資金繰りという社会課題に向き合っている経営者がいて、仕組み上は利益を捻出できるようになっている。一定の分岐点を超えればしっかりもうけることができるんです。そして、着実にyupのサービスは伸びている。だから、阪井さんがファイナンスを始めたとき、真っ先に手を挙げました。

阪井:服部さんは、国内でも有数のフィンテック企業に初期のころから投資してきた実績をおもちで、僕たちのことをわかってくれるという信頼感が大きい。yupは21年12月にウォレットアプリのKyashとのサービス連携を発表しましたが、先方の鷹取(真一・代表取締役)さんとつながることができたのも、服部さんのおかげ。知見を共有していただけることはありがたい。

「先払い」は累計申し込み件数が1万7000件ですが、今後1年で最低でも3倍には伸ばし、中長期的には請求書の発行や受取など、会計まわりを含めてよりスモールビジネスの経営を支援できるようにしていきたい。

服部:そこまでたどり着けるように、まずはこの1年でビジネスをしっかり立ち上げていきましょう。エクイティの調達はもちろんですが、採用やアライアンスの面も積極的に人を紹介して支援していきます。


はっとり・まさひろ◎W venturesパートナー。1985年生まれ。2008年、三井住友銀行入行。法人銀行業務を担当。10年にSMBCベンチャーキャピタルへ発足時メンバーとして出向。その後、DNX Venturesを経て20年より現職。

さかい・ゆう◎yup代表取締役社長。1989年生まれ。大阪教育大学を卒業後、NTTドコモで技術営業、コイニー(現・ヘイ)で事業開発に携わった後、2019年2月にyupを創業。オンライン型ファクタリングサービス「先払い」を展開。

文=眞鍋 武 写真=平岩 亨

この記事は 「Forbes JAPAN No.089 2022年1月号(2021/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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