その人事部長が言うには、「最近、庁内で、管理職になることを望まない若手職員が増えているので、管理職になる意欲を引き出すような話を、お願いしたい」とのこと。
筆者の世代の人間は、勤めている組織が官庁であれ、民間企業であれ、管理職となり、マネジメントの道を歩むことは、仕事は大変になるが、それが、むしろ、働き甲斐に通じるという感覚を持っていた。
しかし、昨今の職場の現実を見つめるならば、たしかに、時代が変わったというべきなのであろう。
例えば、筆者が若手社員であった1980年代は、「厳しい上司」という言葉が、比較的、肯定的な意味に使われていた。
いま、同世代の仲間が集まり当時を振り返っても「あの上司にはよく叱られたが、お陰で成長できた。だから自分の今日がある」「あの上司は厳しかったが、部下に対する愛情があった。それが伝わってきた」といった言葉が自然に出てくる。
しかし、いまは、部下に少し厳しいことを言うと「パワハラ」との批判を浴びる時代。たしかに、部下の人生を思い、成長を願う愛情もなく、ただ権力を振り回す「パワハラ上司」がいることも残念な事実であるが、一方、自己中心的な言動をする部下に対しても、細やかに気を使いながらマネジメントを行わなければならない時代である。
また、長引く景気低迷の中で、合理化と人員削減が進み、短期間に少人数で期待される成果を出さなければならない時代でもある。
こうした時代に、「管理職になりたくない」「マネジメントの道を歩みたくない」という気持ちになる若手の人材が増えることも、ある意味で、仕方が無いことであろう。実際、管理職として背負う、こうした「重荷」を考えるならば、管理職手当などの金銭的報酬も、与えられる多少の権限も、「仕事に見合わない」と考える若手も増えているだろう。