ビジネス

2022.03.23 17:30

わかりづらい世界に新たな合理性を PwC成長の要因を立役者に聞く

PwC Japanグループ代表 木村浩一郎 

PwC Japanグループの勢いが止まらない。2021年(2020年7月〜翌6月末)の業務収益は、前年比10%増の2056億円。PwCグローバルネットワークの営業総収益2%増を大きく上回る成長ぶりだ。

成長の立役者が、グループ代表の木村浩一郎だ。代表に就任した16年の業務収益は1024億円。そこから毎年2ケタ成長を続けて、5年で倍にした。要因を尋ねると、木村は「専門性の幅の広さ」と答えた。

「監査法人、コンサルティング、税理士法人、ディールアドバイザリーなど、グループには10以上の法人格があります。ただ、幅が広いだけではうまくいかない。バックグラウンドの違う人たちが法人格の壁を越え、パーパスに向けて一緒にやってきたことが、成果につながった」

横の連携を強調するのは、かつてはグループとして有機的に機能していなかったことの裏返しでもある。

中央青山監査法人の不祥事を受けて、あらた監査法人(現PwCあらた有限責任監査法人)を設立したのは06年。約900人の船出で、木村もそのなかにいた。

09年にはベリングポイントを買収してコンサルティング会社がメンバーに加わる。専門性の幅が広がったが、当初はシナジーを生むどころか、対立が絶えなかった。

「旧ベリングポイントはJ-SOX(内部統制報告制度)対応の案件が終わって苦しくなった。一方、あらたは人を一気に採用したものの、戦力化できずかえって厳しくなった。お互いに業績が悪くなって、話が違うじゃないかと内輪もめになりまして……」

特有の事情もあった。監査法人や税理士法人は、法律上、その上に会社を置いて支配することができない。グループ代表がいても指揮命令系統で各法人をコントロールすることはできず、「みんな参加しませんかと導くだけだった」という。

この状況にメスを入れたのが木村だ。監査法人出身の木村は代表に就任するなりナンバーツーのポジションをつくる。そこにコンサルティングのトップを就任させ、お互いの戦略を擦り合わせてグループとして仕掛けていった。サイバーセキュリティ分野への注力はその一例だ。

「オポチュニティがあることはわかっていました。ただ、監査法人はリスクを評価して課題を見つけるケイパビリティはあっても、課題を解決するサイバーの知見は強くない。それをもった人を採用したくても、監査法人と聞いただけで逃げてしまうので(笑)。コンサルティングは、その逆。グループとして戦略的に人を採用して一緒にやっていくことで、ビジネスとして大きくなった」
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文=村上 敬 写真=苅部太郎

この記事は 「Forbes JAPAN No.091 2022年月3号(2022/1/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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