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2022.03.25 08:30

メンタルヘルスの重要性に目覚るインド。過去数年で劇的な変化も


しかし、同時にこの調査では、進展を阻む障がいがいくつか指摘されています。統合失調症、強迫性障害(OCD)、小児期の障がいなどの疾患に対する理解には依然として大きな隔たりがあり、メンタルヘルスへの介入に対する理解やアクセス状況はまだまだ改善されていません。また、精神疾患には超自然的な根拠があるといった俗説もあり、認知度が高まっている一方で、二重思考や国民各層における知識の格差は未だ大きな課題として存在しています。

「The Wellcome Global Monitor:Mental Health」は、人々が不安やうつ病についてどのように考え、対処しているかについての世界最大の調査であり、この二項対立をより広いスケールで検討。13カ国11万9000人以上を対象に実施したこの調査では、新たな解決策を見出すために科学が果たすべき役割について考察しています。

さらにこの調査では、92%が「メンタルヘルスは身体の健康と同等かそれ以上に重要である」と回答しており、ウェルビーイング(幸福)におけるメンタルヘルスの役割について、世界的に理解が広まっていることが分かります。

一方で、進展の妨げになりかねないもうひとつの貴重な事実も明らかになりました。対象者は、人間の感情や気持ちがどのように機能するか(27%が「とてもそう思う」)よりも、身体がどのように機能するか(46%が「とてもそう思う」)を説明するのに科学はより適していると考える傾向にありました。また、科学で「感染症、がんは治療できる」(それぞれ53%、49%が「とてもそう思う」)が、「不安やうつ病には効果が薄い」(31%が「とてもそう思う」)と考える傾向があることも分かりました。

次に、インド国内に目を向けてみましょう。

ウェルカム社の調査によれば、メンタルヘルスに対してインド国民は好意的な姿勢を見せています。実際、調査の対象者はメンタルヘルスに対して最もオープンな見解を示しており、「不安やうつ病について近くにいる誰かにとても気軽に相談できる」と回答したのは42%。これは他の国々の19%という結果と比較すると、その割合は倍以上となっています。

また、「科学は精神疾患を説明することはできても治療することはできないかもしれない」という、メンタルヘルスにおける科学の役割に関する世界的な見解はインドでも広まっていることが分かりました。

両調査はともに、インドがメンタルヘルスの現実と治療の効果に目覚めつつあること、寛容な受け入れ姿勢があることを示すと同時に、教育やメンタルヘルスへのアクセスが身近になったことの影響を指摘しています。しかし、この状況をさらに進展させていくためには、構造的なサポートが必要です。

例えば、科学に関しては、新しい情報を発見するだけでなく、その理解を幅広く伝えていくことも重要。さらに、政策立案者、サービス事業者、教育者は、サービス不足が深刻なメンタルヘルス関連のニーズに対応する強固なシステムを国家として構築していく必要があります。これらの枠組みでは、個人差も考慮しなければなりません。細胞レベルから社会レベルに至るまで、人々はあらゆるレベルでのパーソナライズ化と、自らの心の健康を管理するための自律性を必要としているのです。

このような解決策は複雑であり、大規模な介入は気の遠くなるような仕事ですが、私たちは強い意志を持ち、一歩ずつ前進するためにできることから取り組まなければなりません。まず楽観的に考えることが、素晴らしい第一歩につながるのです。

(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Anisha Padukone, Chief Executive Officer, Live Love Laugh Foundation

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