人材コンサルティング企業マーサーが、米国の300超の雇用主を対象に2022年3月に実施した調査では、「給与予算に関して物価上昇を考慮に入れない」とする回答が45%にのぼった。「物価上昇を理由に給与予算を変更する」と回答した組織は25%に満たない。その一方で、「物価上昇に対応する金銭的措置を従業員が求めている」と回答した組織は42%だった。
とはいえこの調査では、「対策のひとつとして、従業員の一部もしくは全員に対して、追加の給与査定を実施する」と回答した組織が半分近くに達した。この結果は、対策をとらなければ従業員を失うかもしれないとの懸念が一部の組織で高まっている可能性があることを示している。従業員の離職理由のうち、給与への不満や、他社からのより高額の給与オファーをトップに挙げた組織はじつに77%にのぼった。
マーサーのパートナー、タウシーフ・ラフマン(Tauseef Rahman)は、この最新調査のデータに関するEメールのなかで、「労働のコストではなく、生活のコストを第一の基準として給与を払う慣行が定着することに対して、組織は警戒感を抱いている」と述べている。ラフマンによれば、雇用主の多くは給与を決める際に、その地域において特定の役職の人に一般的に支払われている給与をもとにしているという。
従業員が求めているものと、その対応として雇用主がこれまでに実施していることが食い違っている現状だが、それについては意外ではないとラフマンは述べる。「給与は、必要とされる人材についての需給ではなく、もっぱら生活のコストに基づいて決まる、という期待が生まれることを、組織は懸念している」
問題のひとつは、雇用主が「採用候補者や従業員に対して、給与がどう決定されるかを明らかにしていない場合があることだ」とラフマンは述べている。
一方、マーサーの調査の対象になった組織の50%は、従業員の獲得と維持が難しい状況にあることから、相場よりも高い給与を払っていると回答した。さらに41%は、なんらかのリテンションボーナス(一定期間、企業に在籍することを条件に従業員に支払う一時金)を導入していると述べている。
また、回答した組織の60%は、カウンターオファーを受ける採用候補者の数が増えていると述べている。さらに、「カウンターオファーと同等以上の条件を提示する」と答えた組織はおよそ30%だった。