ウクライナ侵攻で始まった戦後秩序崩壊 G7と日本は新秩序を作れるのか

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19+14+7+28=68 1914年7月28日(第1次世界大戦が始まった日)
19+39+9+01=68 1939年9月01日(第2次世界大戦が始まった日)
20+22+2+24=68 2022年2月24日(ロシアのウクライナ侵攻が始まった日)

最近、欧州在住の知り合いが教えてくれた。数字の語呂合わせで、それ以上の意味はない。ただ、こういう数字合わせが話題になるほど、一部の人は「ロシアのウクライナ侵攻が第3次世界大戦に発展するのではないか」という不安な気持ちを抱えているということだろう。

自民党ベテラン議員の1人も「これはロシア対ウクライナの戦争にとどまらない。世界が、自由主義と権威主義の対立に巻き込まれているのだ」と語る。西欧や日米に現在、戦火こそ広がっていないが、戦争の余波は徐々に広がっている。西欧社会がロシアに経済制裁をかけ、ウクライナに軍事支援を行えば、ロシアはこうした国や地域を「非友好国家」に指定し、対抗措置を取っている。ロシアのラブロフ外相は19日、「ロシアは中国との関係を強化していくだけだ」と語ったという。

欧米を中心とした自由主義陣営と中ロなどの権威主義陣営の対立が深まると、何が起きるのか。ベテラン議員は「戦後秩序の崩壊が始まる」と予想する。戦後秩序とは名前の通り、第2次世界大戦の戦勝国に都合の良い国際秩序のことだ。国連安全保障理事会の常任理事国も、核不拡散条約(NPT)体制が認めた核保有5カ国も、すべて戦勝国が独占している。自由主義陣営の英米仏と権威主義陣営の中ロが呉越同舟するシステムだ。両者の対立が深まれば、こうしたシステムは動かなくなり、新しい国際秩序の登場が待たれることになる。

日米は最近、こうした対立を念頭に、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想や、日米豪印による安全保障対話(QUAD)を進めてきた。しかし、頼みのインドは、ロシアのウクライナ侵攻を非難した国連総会緊急特別会合の決議を棄権。19日に発表された日本とインドの首脳共同声明でもロシアを名指しで批判することに失敗した。外務省関係者は「インドはインド太平洋の安全保障では日米と組む考えがある一方、カシミール地方やパキスタンなどを巡る安全保障では、日米は頼りにならないと考えているようだ」と語る。

こうしたなか、自由主義陣営が当面、頼りにするのがG7(Group of Seven=主要7カ国)。英米独仏伊加日という「Like-minded countries(志を共有する国々)」の集まりだ。日本政府の元高官は「G7は元々、自由主義経済を守るために生まれた集まりだった。冷戦崩壊でますます、政治的な意味が失われたが、今後はG7が国連に代わる新秩序のコアになっていくだろう」と予言する。確かに、岸田文雄首相も林芳正外相も松野博一官房長官も、最近の国会答弁や記者会見で「G7をはじめとする国際社会との連携」というフレーズを連発している。岸田首相は24日にベルギー・ブリュッセルで開かれるG7サミット(首脳会議)に出席する。
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文=牧野愛博

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