企業が利益を出すことが重要で、投資家としては「ROE(自己資本利益率)」の改善を期待しています。
ROEは、その企業がどれだけ効率良く、多くの収益が出せるのかを示すもの。私たち投資家にとって、将来の成長を見込める企業なのかどうか投資判断に用いる指標です 。
現時点で日本の株式市場全体に対して、海外投資家の見方は厳しいです。彼らと話していて言われるのは、「財政問題を抱えていて、高齢化で労働力も増えない。つまり日本は成長しない国。なぜ投資する必要があるのか」と。
そういった見方をされるなかで、企業は中長期で成長するために何をすべきか考えなければなりません。例えば、賃上げや人材投資は、短期的に考えたら利益は押し下げる方向です。
しかし、5年、10年という長い目で見たときに、それらは優秀な社員確保や社員の成長にもつながります。モチベーション上昇により、生産性が向上することも期待できます。
またガバナンスの体制を整備していくことも必要です。大型企業でも社外に対して透明性ある経営をしようという意識が低い企業、株主を始めステークホルダーへの配慮が弱い企業がまだあります。例えば規制業種では、外部からの参入がないため、業界内や社内の論理が優先されるような傾向があるのではないでしょうか。
一方、グローバルで戦っている企業には、やはり世界標準の視座がある。こうした意識の格差も埋めていく必要があるでしょう。
ただ先述したように再編ではプライム上場には厳格な上場維持基準が定められました。それを満たすために手を打たざるを得ない企業は多いと思います。そのなかで良い方向に変化していく企業は、投資リターンの観点で投資魅力が高く、注目していきたいと思います。
女性取締役の設置を求める
── JPモルガン・アセット・マネジメント 取締役 株式運用本部長 水澤 祥一
1800社以上がプライムに移行し、東証一部と変わらなかったことは残念です。「日本はやはり変わらない」。そんな印象をいろいろな海外投資家に与えてしまったのではないかと懸念しています。
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今後プライム企業が進めていくべき改革は、ガバナンスの強化、サステナビリティを中心とした情報開示、持ち合いの解消など。プライム市場で設定された以上のハードルを設置し、多くても500社程度となることを期待します。
多くの日本企業をみると、自助努力による収益力や資本効率の改善余地は大きいと感じます。その改善には、ガバナンスの強化が欠かせません。