クルマはセールスのあとが大事。特に、スポーツカーでは、顧客が手にいれたプロダクトで、どう楽しめるかが、つぎのセールスにつながっていくとされる。そこがわかっているポルシェジャパンでは、2021年10月に「ポルシェ・エクスペリエンスセンター(PEC)東京」を開設。
東京からアクアラインをわたった千葉・木更津につくられたPECには、全長2.1kmのロードコースや、オフロードがある。911をはじめ、数々のプロダクトのなかから好みのモデルを選択して、走りかたをインストラクターに習う。摩擦係数が低い路面での走りかたや、ドリフトの方法を習えるコースもある。
ポルシェを所有していても実生活ではなかなか体験できないドライビング。ここで堪能できると、ポルシェ好きのあいだでは大人気だ。通いづめといっていいほど熱心なポルシェ・オーナーもいるとか。
「日本でポルシェは最高峰のスポーツカーとして長いあいだ愛されてきましたが、ドライビングなどを通じた顧客とのコミュニ ケーションはまだまだ十分ではないのではないか、という思いがありました」
現在、PEC東京のオペレーションマネージャーを務めるポルシェジャパンの関本清人はそう回想する。ちょうど何か新しいことをしたいという着想が当時のポルシェジャパン経営陣にはあり関本が思いついたのが、2016年当時、世界各地のポルシェファンのあいだで話題になっていたPECだった。ポルシェ本社の後押しを受けて、世界各地の現地法人が運営する施設である。
Kiyoto Sekimoto/ ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京 副所長 オペレーションマネージャー。1997年にポルシェジャパンに入社し、モータースポーツのマネジャーやエクスペリエンシャルマーケティングのマネジャーを務め、2018年から現職。
PECは、2008年11月の、英シルバーストンを皮切りに、ドイツ、米国、フランス、イタリア、中国などで展開され、東京は9番目。内容はそれぞれ、現地法人が事業計画書をつくり、本社の認可を受ける。
ロケーションとして木更津を選定した理由は、広い土地が見つかったこと、地元の協力があったこと。加えて、アクアラインを通れば都心からも近い。羽田や成田といった国際空港からも直行できるなど、考えられるメリットが多かったからだ。