大統領としての任期中、トランプにとってペンスは最も忠実な盟友の一人だった。だが、2021年1月6日、大統領選の結果を正式に承認する上下両院合同会議に副大統領として出席したペンスは、「選挙結果を覆す」というトランプの試みに、力を貸さなかった。
トランプとその弁護士を務めていたルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長らは、結果の承認を何とか阻止するよう、ペンスに圧力をかけていた。だが、ペンスは「副大統領の役割は、手続きの進行を監視する儀礼的なもの」であるとして、介入しなかった。
トランプとペンスの関係は、この一件をきっかけに“崩壊”したとみられている。トランプは先ごろ、ワシントン・エグザミナー誌のインタビューの中で、2024年の選挙に自身が出馬した場合、副大統領候補にペンスを選ぶことは「人々が受け入れないだろう」とコメント。「マイクのことは今も好きだ」と言いつつ、「長い間話をしていない」ことを明らかにした。
一方、ペンスは2月に出席したイベントで行ったスピーチで、「選挙結果を覆す権限は(私には)なかった」と説明。副大統領にはそれができたと主張するトランプは、「間違っている」と語った。
2020年に行われた大統領選の結果を承認するため、議員たちが集まっていた連邦議会議事堂にトランプの支持者らが乱入したとき、ペンスはほかの議員らとともに、安全な場所に避難することを余儀なくされた。
だが、ペンスが避難したことを知ったトランプは、「我々の国と憲法を守るためにすべきことをする勇気がなかった」とツイッターに投稿。ペンスを非難した。暴徒化したトランプ支持者らは、議事堂とその周辺で繰り返し、「マイク・ペンスをつるせ!」と声をあげた。議事堂の外には、首つり縄を付けた手製の絞首台が設置されていた。
有力候補
世論調査の結果をみると、トランプが2024年の大統領選への出馬を決めた場合、共和党の候補に選出される可能性は高いと考えられる。だが、ペンスも数カ月前から、立候補に向けた地ならしといえる活動を開始しているもようだ。
今月初めには、トランプが2月、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナへの侵攻を正当化するため、同国東部のロシア寄りの2州の独立を承認したことを「天才だ」と称賛したことについて、「共和党にはプーチンの“擁護者”が存在する余地はない」と発言。トランプへのあてこすりだったとみられている。
トランプが共和党の候補指名を獲得した場合のランニングメイトとして、誰を検討しているかは今のところ明らかではない。トランプの新たなパートナーになると目されていたフロリダ州のロン・デサンティス知事も、数カ月前から関係の緊張が伝えられている。