ビジネス

2022.03.21

「洗濯タダ」の廃止嘆くメタ社員 テック業界の職場に異変

Photo illustration by Chesnot/Getty Images

厳しい時期なのは誰もが知っている。パンデミックのせいで、ひっきりなしにストレスや不安にさいなまれる生活が続いてもう2年になる。そこに記録的なインフレが重なり、何から何まで値上がりしている。そして、状況がようやく良くなってきたと思われていた矢先に、ロシアがウクライナに侵攻した。

そんななか、さらなる「災難」に見舞われた人たちもいる。信じがたい話だが、どうか驚かないで聞いてほしい。匿名の職場コミュニティーアプリ「Blind(ブラインド)」への書き込みによると、フェイスブック改めメタの社員は、無料の洗濯代行サービスを含む一部の福利厚生を「無慈悲に」削られてしまったのだ。

メタをはじめとする大手テック企業は、社員の福利厚生が手厚いことで有名だ。だから今回の措置には首をひねってしまうわけだが、メタ社員が奪われた特典は洗濯サービスだけではない。メタはやはり無料で社員に提供している夕食サービスの提供時刻を午後6時半に30分遅らせるほか、食べ物の持ち帰り用のボックスも廃止するという。

ニューヨーク・タイムズによると、メタが社員の送迎用に運営しているシャトルバスの最終便の発車時刻は通常、午後6時であるため、夕食提供時刻の変更は社員にとって都合が悪い。メタによる今回の決定は、シリコンバレーの職場の変化を示す動きと見ることもできそうだ。

Blindに書き込んだメタ社員は、本来は自社の株価急落について心配してもよかったはずだ。テック企業で働く人には、収入のかなりの部分を株式やオプションで得ている人が少なくない。株価が急騰すれば彼らの資産も膨らむが、逆に急落すると、株価は永遠に上がり続けると信じて過剰に支出してきた社員の夢や希望も潰えてしまう。

メタはこのところ、ほかのテック大手にも増して多くの試練にさらされてきた。自社のプライバシーポリシーをめぐる疑惑のほか、メタの広告ビジネスモデルに不利なアップルの新ルール、グーグルへの広告流出、ユーザー数の伸び悩み、TikTok(ティックトック)の人気の高まり、マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)による「メタバース」シフトにともなう巨額支出などだ。これらが最近のメタ株の大幅安につながった。

ニューヨーク・タイムズは、メタの社員のなかには「株式ベースの報酬が急減するのを目の当たりにして、新しい仕事を探すべきか話し合っている人もいる」とも伝えている。

Blindの投稿者が示した懸念は、必ずしも洗濯や夕食の無料サービスが利用できなくなること自体に向けられたものではなく、良い時代はもう過ぎ去ってしまい、しばらく戻ってこないのではないかという不安の表現だったのかもしれない。将来、株で資産を築けると見込んで、稼いだ額を大幅に上回る額を費やしてきた人が、いま打ちひしがれていてもおかしくはない。

編集=江戸伸禎

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