ピンクは同書で「後悔のネガティブな感情をポジティブな道具に」変え、改善に活用する方法を説明した。その中では、社会学や心理学、精神医学も絡めてあり、興味深い。
しかし、経営やリーダーシップの立場の人にとって本当に興味深いのは「Anticipating Regret(後悔を予測する)」のセクションだ。ここではアマゾン創業者ジェフ・ベゾスの言葉も紹介されている。
ピンクによると、ベゾスは何かを実行したときとしなかったときの結果を想像することを基盤とした生活や仕事へのアプローチを示している。
ベゾスは銀行に勤めていた1990年代、高報酬の仕事を辞め、当時の新たな技術だったワールドワイドウェブを通じて書籍の販売を試みることに決めた。しかし上司にその決断を再考するように促されたベゾスは、体系的な分析方法を求めた。
コンピューター科学者のベゾスは当然、一種のアルゴリズムを作り上げた。彼は自分が80歳になったときのことを予想し、後悔の数を最小化することを望んだのだ。ピンクは、ベゾスをインタビューしたときに語られた次の言葉を引用している。
「私はインターネットが非常に重要なものになると考えていて、それに参入しようとしても後悔はしなかった。失敗しても後悔しないことは分かっていたが、一つ後悔するかもしれないことがあるとすればそれは挑戦しなかったことだと知っていた。毎日それに悩まされると知っていたため、そう考えるとひどく簡単な決断だった」(ベゾス)
この方法はベゾスにとっては明らかに成功だったが、ピンクはこの手法にはマイナス面もあると警告している。特に問題なのは、私たちが自分の感情の強さや持続期間をうまく予想できないことだ。
例えば、電車を1分遅れで逃したときと5分遅れで逃したときは、どちらの方が後悔が大きいだろう? あるいは2つの電子レンジで迷ったが、後日消費者リポートで2つのどちらが上かを評価すると伝えられた場合はどうだろう?
ピンクは「後悔を予想すれば、私たちは時に最善の決断から、自分を後悔から最も守ってくれる決断へと流されてしまうことになりかねない」と述べた。そのためピンクによると、目標は後悔を最小化することではなく最適化することであるべきだ。
後悔を予想する技術を後悔の深い構造(ピンクが自身の調査で特定した4つの主な後悔に基づくもの)と組み合わせることで、ピンクが「Regret Optimization Framework(後悔の最適化の枠組み)」と呼ぶものができる。この枠組みは、基礎、大胆さ、道徳的、つながりの中核的な4つの後悔を予想することに時間と労力を費やしつつ、他の後悔は気にしないよう促すものだ。
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