迎え撃つのは全員女性、「ガンパウダー・ミルクシェイク」はどんな味?

『ガンパウダー・ミルクシェイク』3月18日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー/ 配給:キノフィルムズ/(c)2021 Studiocanal SAS All Rights Reserved.


息絶え絶えで電話に出た会計係だったが、相手は彼の娘を誘拐した男たちで、60分以内に金を持って来なければ娘の命はないと告げるのだった。サムは15年前に母親と別れたままの自分と、彼の娘を重ね合わせ、代わりに金を持って彼女の救出に向かうのだった。

この後、サムは別な理由でも組織から追われることになるのだが、襲われるたびに趣向が凝らされたアクションシーンが登場する。ボウリング場での生身の闘いや、両腕が使えなくなったサムが策を凝らして窮地を脱出する場面、地下駐車場でのカーアクションなどが続く。

なかでも異色なのは、サムが武器を調達する「図書館」でのバトルシーンだ。図書館とは名乗っているが、書棚に並んだ重厚な本のなかには書名に因んだ武器が隠されており、サムはそれらを使って大挙押し寄せてきた敵を迎え撃つ。

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(c)2021 Studiocanal SAS All Rights Reserved.

図書館には、かつてサムと同じ殺し屋だったアナ・メイ(アンジェラ・バセット)、マデリン(カーラ・グギーノ)、フローレンス(ミシェル・ヨー)の3人の女性司書がいて、最終的には彼女たちとともに、追撃してくる男たちと闘うことになる。この女性司書3人の三者三様の戦いぶりも見どころのひとつだ。

タランティーノから絶賛された監督


「ガンパウダー・ミルクシェイク」は、そのスタイリッシュな映像や舞台設定などから、キアヌ・リーブス主演の「ジョン・ウィック」シリーズを彷彿とさせる。「ジョン・ウィック」で殺し屋たちが集まるホテルが、ちょうど「ガンパウダー・ミルクシェイク」の図書館に当たる。

他にも過去のアクション作品をリスペクトしたシーンが次から次へと登場して、カラフルな色彩の映像とも相俟って、テンポ良く進む。ひとつずつのシーンも、かなり映像設計は計算されており、つくりもの感はするが作品としての完成度は高い。

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(c)2021 Studiocanal SAS All Rights Reserved.

監督と脚本はイスラエル出身のナヴォット・パプシャド。2013年に発表した「オオカミは嘘をつく」が世界各国で上映され、各地の映画祭で高い評価を得た。またクエンティン・タランティーノ監督からも「本年度最高傑作」と絶賛された。
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文=稲垣伸寿

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