BMWは電気自動車のパイオニアだ。2013年にいち早く、PHEVのスポーツクーペ「i8」を、翌14年にはピュアEVである「i3」を発表。i8は20年まで製造が続けられたが、ついに21年秋、新世代「iX」と「iX3」にとって代わられた。
iシリーズとはBMWのラインナップにおけるピュアEVシリーズの総称。メルセデス・ベンツは「EQ」、アウディは「e-tron」 など、各社独自のブランドを設けている。
iXはグロスブラックに塗装された大型のキドニーグリルに、BMW車のなかで最もスリムというヘッドランプの組み合わせ。
日本に導入される「iX xDrive40」の最高出力は240kW、最大トルクは630Nm。満充電での航続距離は450kmという。もう1台が「iX xDrive50」。最高出力は385kW、最大トルクは765Nmで、航続距離は650kmに達するそうだ。
ともに、あきらかに性能は大きく向上している。
BMW(ジャパン)で感心させられるのは、i3からiXへの連続性だ。ピュアEVでもって社会に向き合う姿勢にゆらぎがないように感じられる。
思い起こすと、i3が日本市場に導入されたとき、お披露目は屋久島で行われた。
かつて林芙美子が小説「浮雲」において「月のうち、三十五日は雨」と登場人物に語らせたぐらい、雨の多い屋久島では水力による発電が行われていることに、BMWは着目したのだ。いまの言葉で言うと、脱炭素エネルギーである。
i3は、クルマじたいも、斬新な内外のデザインとともに、重心高の低い車体のためハンドリングがよく、ドライブが楽しかった。BMWが手がけると、たとえピュアEVでも一本筋が通っているのだなあと、私などは感心したものだ。
「駆けぬける歓び、と日本語に訳されているBMW社のクルマづくりのスローガンは、いまにいたるまで不変です」
そう語るのは、BMWジャパンにおいて、BMWブランドマネージメントディビジョン本部長を務める遠藤克之輔だ。
Katsunosuke Endo
BMWジャパンブランドマネージメントディビジョン本部長。電通ワンダーマン、ウォルト・ディズニー・ジャパン。ギャップを経て、2016年からフェラーリでマーケティングディレクターを務め、2021年3月から現職。