フランスのニュース専門テレビ局ユーロニュースは、これまでに欧州連合(EU)の少なくとも9カ国で薬局でのヨウ素剤の需要が急激に増えていると報じている。ラジオ局フランス・アンテルによると、東欧のルーマニアやクロアチア、ポーランドといった国々のほか、ベルギーなどでもこうした現象が起きているという。
ブルガリアの薬剤師でつくる労働組合の幹部が今月9日に明らかにしたところによると、国内の薬局では過去6日間に通常なら1年分にあたる量のヨウ素剤が販売されたという。
ベルギーの薬剤師労組も今月、1日だけで3万箱を超えるヨウ素剤が配布されたことを明らかにしている。ベルギーでは、国のIDカードを所持している人なら誰でも無料でヨウ素剤を入手できる。
フランスではヨウ素剤の生産は軍によって管理されており、在庫や販売は政府によって厳重に保護されている。当局は国内には全国民分の備蓄があり、仮に必要になった場合に所定の量を国民全員に配布する計画も整っていると強調している。
フランスは国内のエネルギー需要の7割近くを原子力で賄っており、エマニュエル・マクロン大統領は原子炉をさらに6基新設する計画を先ごろ発表している。原子力発電所から20キロ以内の範囲に住んでいる人は、地元の薬局でIDと現住所が確認できるものを提示すればヨウ素剤を入手できる。
フランスの当局は、店頭で購入できるヨウ素剤はヨウ化カリウムの含有量が非常に少ないため、放射性物質が漏洩した際は防護効果がないとも注意を促している。
ヨウ素剤は放射性物質を吸い込んだ際に甲状腺がんを防ぐ効果があるが、予防的に服用するものではなく、被ばくの1時間前から最長12時間後までという短い時間内に摂取する必要がある。
米原子力規制委員会(NRC)は、放射能から身を守る最善の方法は避難であり、ヨウ素剤はあくまで補助的なものと考えるべきだとしている。