英政府が「デジタルID」導入へ、セキュリティの議論が勃発

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英国のデジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMS)は3月11日、新たに導入するシステムで、電子的な本人認証の仕組みを構築し、パスポートや運転免許証などの公的文書と同様に安全なデジタルIDを提供するとアナウンスした。

デジタルIDは、住所の移転や転職、アルコールを購入する際の年齢証明などのあらゆる場面で本人確認に用いられる。このIDは、アプリやウェブサイトから入手でき、対面でもオンラインでも使用できる。

ただし、デジタルIDは所持を義務付けられるものではなく、紙のIDを希望する人は、今後もそれを使い続けることが可能だ。

「私たちが提案している法案は、人々や組織が信頼できる安全な方法でデジタルIDを使用することを保証する」とデータ大臣のジュリア・ロペスは述べている。

導入に向けた最初のステップは、Office for Digital Identities and Attributes(ODIA)と呼ばれる暫定的な管理機関の設立だ。ODIAは、複数のID管理組織をトラストマークで認証し、それらの組織が最高水準のセキュリティとプライバシーを遵守していることを保証するとしている。

政府はこの認証プロセスとトラストマークを確立するための法案の策定を、可能な限りすみやかに進めていく予定という。さらに、公的機関が保有するデータに対して、信頼できる組織が検証チェックを行うための法的ゲートウェイを設置する。

テクノロジー業界の団体のTechUKのSue Daleyは、今回の政府の発表を歓迎すると述べ、「現在進行中の産業界と政府の継続的な協力は、英国におけるデジタルIDエコシステムの導入を成功させるための最良の機会をもたらしている」と語っている。

しかし、プライバシーやセキュリティの不安を訴える声もあり、マイクロソフト・セキュリティのMelanie Maynesは、ブログで次のように指摘した。

「様々な企業が人々のアイデンティティを個別に管理することで、セキュリティやプライバシー侵害のリスクが高まっている。私たちは、個人のアイデンティティをとりまとめ、信頼度が高く安全な方法でそれを運用可能にするシステムを必要としている」

しかし、英国政府は過去のIDシステムの導入に関して、お粗末な記録を持っていると言わざるを得ない。

2011年に導入されたベリファイ・プロジェクトは、政府のさまざまな部署へのアクセスを簡素化することを目的としていた。しかし、2020年までに2500万人が登録すると予想されたこのシステムに、実際に登録したのはその4分の1にも満たなかった。

このサービスは2020年3月までに終了する予定だったが、パンデミックの混乱により、さらに3年間延長されていた。

編集=上田裕資

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