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2022.03.20 08:30

新型コロナによる雄生殖器の損傷、サルやハムスターで確認

Radoslav Zilinsky / Getty Images

新型コロナウイルスはサルやハムスターの雄の生殖器に感染し、損傷を引き起こすという有力な証拠を示した査読前論文が、このほど相次いで発表された。新型コロナウイルスに感染した男性の一部に精巣痛や生殖能力の低下、精液中のウイルス残存などがみられる理由の解明につながる成果だ。ワクチン接種によって雄生殖器の損傷を予防できることも、初期段階の結果ながら確認された。

香港の研究チームは、鼻腔内投与または精巣への直接注入によってウイルスに感染させたハムスターで、精巣へのダメージが確認されるかを調べた。ウイルスは初期の新型コロナウイルスの分離株「HK-13」のほか、変異株「ベータ」と「オミクロン」の各分離株を用いた。その結果、これらの分離株はいずれも、病理学的にわずかな違いはあるものの精巣の損傷を引き起こすことが確認された。

ウイルスを鼻腔内に投与したハムスターでは、精巣が大きなダメージを受けていた。具体的には精巣の著しい収縮や重量減少、炎症、出血、精子数の減少がみられたほか、性的発達や健全な性機能をつかさどる男性ホルモン「テストステロン」や、テストステロンの分泌を調節するはたらきをするタンパク質「インヒビンB」の濃度も顕著に低下していた。精巣の収縮や重量減少、精子数の減少は感染後少なくとも120日間続いたという。

ウイルスを精巣にウイルスを直接注入したハムスターでは、ウイルスが精巣組織で複製されることも確認された。

注目すべきことに、HK-13株を鼻腔内から感染させたハムスターでは、不活化ワクチンを14日間隔で2回接種することで精巣障害の発生を予防できた。

一方、カナダの研究チームは、アカゲザルに「WA-1」株やデルタ株を鼻腔内または気管内から感染させ、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質と結合する抗体と結合する銅同位体を利用して、生体内でのウイルスの広がりを追跡した。ウイルスの存在が確認された部位ではさらに、器官や組織を採取して損傷を調べた。

すると、肺などのほかに、雄生殖器でもウイルスの反応を示す強い信号が検出された。これはWA-1株とデルタ株のどちらのウイルスを感染させたサルでも同様だった。これらのサルでは臨床観察で睾丸の炎症や精子数減少、勃起不全も認められ、研究チームはこうした症状は「組織がウイルスに直接感染した結果と考えられる」としている。

また、感染後の経過観察では、肺の感染レベルが1週目から2週目にかけて急激に減少していたのに対し、雄生殖器の感染はこの間にむしろ悪化していたこともわかった。

論文では、陰茎の新型コロナウイルス感染は海綿体の血管にかかわってくる可能性があると指摘。海綿体は勃起機能で重要な役割を果たすものであるため、陰茎血管系の感染による炎症が勃起不全につながると推測されると記している。

カナダの研究チームは今回確認されたメカニズムについて、人間の男性の性的健康や生殖能力に悪影響を及ぼすものであるため、研究や評価の初期段階ながら公表せざるを得ないと感じたと説明している。

これらの発表に関して安心できる点があるとすれば、雄の生殖機能の低下は一時的なものである可能性があることと、ワクチンの接種によって多少は軽減されそうだという点だろう。コロナ禍が男性の生殖能力に及ぼす影響については、一段の臨床研究や実験が必要だ。

編集=江戸伸禎

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