ラグジュアリーブランドが次々と値上げ
インフレが小売業界を襲っている。特に大きな話題となったのは、世界最大のラグジュアリーブランドであるルイ・ヴィトンが全世界で値上げすると発表したことだ。シャネルも、ここ2年で3度の値上げを敢行した。グッチやエルメスをはじめとするほかの超一流ファッションブランドも、値上げを発表するのはもはや時間の問題だとアナリストは見ている。
「ルイ・ヴィトンとシャネルは1980年代以降、同じスタイルで値上げをしてきた。こうした状況は、もう何十年も前から、毎年起こっている」とデイビスは言う。ただし、近年は値上げの幅と頻度が増していると指摘。インフレ圧力がラグジュアリー商品のリセールにとっては恵みとなるだろうと話す。
「消費者は、リセール品を目指して中古市場で買い物をしている。これまでとはまったく異なる行動であり、中古の超高級ブランド商品に対する需要増加をあおっていると私たちは考えている」
ファッションファイルにとって、小売界における変動に対応するために頼みの綱としているのが、独自の価格設定ツールだ。過去20年分のデータを活用したツールで、インフレはもちろん、特定のブランドや商品の人気の変動と回転も、価格設定に織り込まれている。
とはいえ、ラグジュアリー経済では結局、データサイエンスは脇役であり、優先されるのはそのときどきの流行だ。
「データは、熟考したうえで慎重に使わなくてはならない」とデイビスは言う。「どのスタイルが同程度まで価格が上昇するのかはわからないので、専門チームが、各スタイルと各カテゴリーをつねに注視している。数年前は見向きもされていなかったスタイルが、再びブームになることもある」