イコナシリーズで重要視されているのは、過去のモデル、とりわけレーシングモデルをインスピレーションの源泉とすること。18年に発表された1号車と2号車は「モンツァSP1」と「モンツァSP2」と名づけられ、「過去の象徴的なフェラーリ・レーシング・バルケッタの祖となる1948年の166MMを想起させる要素」を盛り込んだと、フェラーリ自身が説明する。
今回の「デイトナSP3」は、1967年のデイトナ24時間レースで1位から3位までを独占した「330P4」「412P」というレースカーのイメージをスタイリングに盛り込んだという。
「あの時代のレースカーのコピーというのではなく、要素をうまく取り込むことで、いまのフェラーリでなければ実現できない審美性と現代性を表現できていると思っています」
今回の記事に合わせて、本誌から出した質問に対して、フェラーリのヘッド・オブ・デザインを務めるフラビオ・マンツォーニが答えてくれた。
「イコナを始めたのは、ごくごく少数生産のフェラーリを求めるマーケットが生まれたからです。そのひとたちは、ごく限られた数しかつくられない、特別なフェラーリを欲しがっています。イコナは、私たちのプロダクトラインナップにおける新しいピラーです。
スタイリングだけが特別ってわけではありません。シャシーもサスペンションもボディもエンジンも、F1でつちかった技術をふんだんに盛り込んだスペシャルなのです。例えばシャシーはT800カーボンファイバー製のタブなど航空用途の複合素材。徹底的な空力設計で、冷却効率と、高速性能を追求。ミドシップしたV型12気筒は、フェラーリ史上最高の840CV(618kW)を発生します」
Ferrari Monza SP1◎「イコナ」シリーズの第1弾として2018年9月に発表された「モンツァSP1」。同時に2座の「SP2」も発表。596kW(810CV)と719Nmの6496ccV12エンジンをミドシップ。1948年の166MMなどレーシングモデルのデザイン要素を取り込んだスタイルが目を引く。
先に触れたモノポスト(単座)の「モンツァSP1」と2人乗りの「同SP2」も、複合素材を使ったシャシーに、810CVのV型12気筒エンジンを搭載。一方、雰囲気は、1950年代のレースカーである。
「イコナは疑いの余地なく、現代的で、かつオリジナリティの高い仕上がりです。ただし、過去のイメージをいっさい排除してしまっては、フェラーリとは言えなくなります。SP1とSP2しかり。今回のデイトナSP3においても、過去の美しいスポーツプロトタイプ(レース用の車両)を意識したスタイリングを採用しています」