菊地:結婚や結婚式は、人と人との関係性があって成り立つものです。なので、人間描写がお得意で、こうしたテーマを深く考えてくださりそうな又吉さんに、ぜひお願いしたいと考えました。
又吉:僕自身、結婚はまだしていないし、家族をすごく大事にしているイメージをもたれているわけではなく…不気味な印象さえももたれているかもしれませんが(笑)、一緒に考えようとお話をいただけて嬉しかったです。
披露宴、どの顔でしゃべったらいい?
──今年の企画展のテーマは「100色の結婚式」。結婚・結婚式の“多様な可能性”を考える内容ですね。
菊地:コロナ禍が長期化するなかで、「これまでのような結婚式ができない」と悲観的になるのではなく、明るく未来を考えられるようになってきたと感じています。だからこそ、多様性や自由さを表現したいと思い、このテーマを選びました。
又吉さんを含む13人のクリエイターのみなさんによる作品や、企業やZ世代による「結婚・結婚式のミライへの提案」など、四章に分けて展示を行いました。
企画展の会場となったのは南青山のスパイラルガーデン。1500本の色とりどりのガーベラで多様性を表現した
又吉:僕は、今回の「100色」というテーマを聞いて、人にやさしいテーマだなと思いました。
僕自身、結婚式はいつかあげてみたいなと思っているんですけど、披露宴って人がたくさん集まるじゃないですか。例えば僕だったら、芸人仲間がいて、親がいて、親戚がいて、小中高の友達がいる。そしてもちろん、パートナーになる方の関係者もいる。
どの顔でしゃべったらいいかわからんな、と思うんです。
ピース・又吉直樹
小学校のときの友達の前ではちょっと明るいし、中学のときの友達の前では暗いし。高校のときはサッカー部だったので、その雰囲気が強いですし。芸人の先輩後輩とかも、それぞれ違ったりして。
嘘をついているつもりも、自己演出をしてるつもりもないんですけど、微妙に違うので、全員が集まったときにどの自分で喋ればいいのか、分からなくなると思うんです。「どの自分で出ていっても、みんなにちょっとずつ違和感を持たれるんじゃないか」と思うと、すごい怖くて。
披露宴が怖すぎて、結婚への気持ちが突き進んでいかないのではと、思うくらい(笑)。まあでも、自分の将来のパートナーの方から「せっかくだからやろうよ」と提案されたら、「そうやな」ってなると思います。
そんな風に僕自身、結婚式に対して苦手意識がある部分があります。なので、「多様な結婚式の形があっていい」という今回のコンセプトは、僕にとってもやさしいテーマでした。