同社は、地上に電波を照射することで地表観測を行う「小型合成開口レーダー(SAR)衛星」を開発する。
天候や時間帯に左右されず観測でき、約1メートル四方の解像度で地形や建物の形を可視化。地下工事などによる地盤変動のリスク判定や、洪水、噴火の様子を24時間365日観察できるのが特長だ。
ハードウェア(衛星)だけでなく、取得したデータ解析というアプリケーションの開発にも取り組んでおり、ワンストップで顧客に情報提供できるのは世界を見ても同社だけだ。
同社は2019年にシリーズAで約87億円を調達し、創業からわずか1年5カ月で累計額は109億円に。3月1日には、2020年12月に続き2機目の実証衛星打ち上げに成功した。
CEOである新井元行に話を聞くと、急成長の裏には、宇宙産業の盛り上がりという時勢に限らない、複数の要因があることがわかった。
「学生の頃、宇宙開発系のエンジニアになりたかったんです」
そんな夢を抱いていた新井だが、2000年代前半は宇宙ビジネスの機運がほとんどなかった。宇宙といえば、NASAやJAXAのような研究機関の領域。「ビジネスとして宇宙産業を盛り上げたい」という壮大な目標を持つ新井にとってその選択肢はなかったという。
ビジネスの知識がなければ、宇宙産業時代が到来したとしてもチャンスをものにできない。そう考えた新井は米系コンサルティングファームに就職し、グローバル企業の新規事業や技術戦略策定などに従事した。
「一度は宇宙開発の夢を忘れていたのですが、いろいろなコンサルティングをやっていくなかで、科学技術のビジネス化や社会実装に興味が出てきました。
そこで、体系立った研究をしたいと思うようになり、東大の技術経営戦略学専攻の博士課程に入りました。科学技術をどう商業化し、スケーラブルな形で社会実装するかを考えるなかで、持続可能な世界を構築していくことを意識するようになりました」
その後は、大学での研究者、フリーランスなどの立場で政府や企業からの依頼を受けてサウジアラビア、タンザニア、バングラデシュ、東南アジアなどの発展途上国で、ソーシャルビジネスの設立や成長に注力してきた。
小型SAR衛星との出会いは2017年だった。