ブルースの行動は何か大がかりな計画に沿ったものではなくて、彼の強迫衝動によるものではないかと。だからこそ、彼はエモーショナルな部分でとても苦しみ、傷ついてしまっている人物だと思うんです。
それはバットマンとキャットウーマンの関係においても同じこと。そこには特有のほろ苦さがあり、彼らは街を救おうとするのと同じくらいの熱量で2人の繋がりを模索しようとしています。彼らの行動原理に純粋に反応して戦っているだけではなく、そこにはとても個人的な物語も内包されているのです。
(c) 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (c) DC
ゾーイ・クラヴィッツ:「バットマン」のキャラクターはかなり長い期間にわたって親しまれてきているので、私たちもうわべだけで「あなたはバットマンで、私はキャットウーマン」というように、それを当たり前のものとして容易く受け入れてしまいがちでした。
でも、そのうわべの層を取り除いて、時間をかけてじっくりとキャラクターを探索してみると、そこにはとても興味がそそられる物語があって、何が彼らを突き動かしているのかという心理状態にまで踏み込んでいけました。
私たちはそのことを本質的に感じ取っていて、そのエモーショナルな部分に惹かれるのだと思います。だからこそ、この作品で長い時間をかけて、エモーショナルな役づくりをやり切っていくことは、とてもワクワクすることでもありました。
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──今回「「ジョーカー」の衝撃は序章に過ぎなかった」という映画の宣伝コピーが使われています。演じるにあたって、トッド・フィリップス監督の「ジョーカー」(2019年)は意識しましたか?
ロバート・パティンソン:あの映画のことはみんなが愛しています。目を見張るような素晴らしい演技を見せてもらいましたから。
僕も最初は、「あの素晴らしい映画を参考にしよう」なんていろいろと考えたりもしましたが、どんな作品であれ、いざ撮影が始まればそれ以外のことは完全に姿を消してしまって、いま目の前にある物語に集中するものです。
映画をつくっている最中、少なくとも僕はジョーカーの演技スタイルがどうだとか、そんなことは考えもしなかった。その日1日をどうするのかだけに集中していて、結果がどうなるのかなんて考えてはいませんでした。
──「バットマン」の映画では珍しい、バットマンとキャットウーマンのキスシーンが印象的でした。この作品は2人のラブロマンスと捉えてもいいのでしょうか?
ゾーイ・クラヴィッツ:そう、よね。
ロバート・パティンソン:ああ、そうだよ(笑)
ゾーイ・クラヴィッツ:絶対そうよ。私はすごくロマンチックな関係がそこにあると思う。この2人はお互い他人とのつながりを見出していなかった、もしくは求めていなかった。そういう意味では、とても複雑ではあるし、双方とも人生に傷ついてしまって、心に痛手を負ってもいる。
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そんななかで、いちかばちかの危機的な状況で互いにロマンチックな関係性を見出すのは、混乱に火に油を注ぐようなものだけれど、だからこそ美しいものになる。自分により多くの気持ちを注いでくれる人が現れれば、それを受け取った側も、もっとその人たちのために戦いたくなると思います。
ロバート・パティンソン:2人は自分に自信がある存在ではある一方で、とても壊れやすい部分がある。監督はとても勇気のある物語の描き方をしたと思います。あんな服装をして、あんな暮らしをしている2人が、実はそれぞれ傷ついた人間であり、それをラブロマンスというかたちで物語のなかに採り入れたのですから。
新たなバットマンの人間像を描き出している「THE BATMAN−ザ・バットマン−」。全3部作のシリーズになるという噂だが、続編製作に期待がかかる。