目をそらすと自動停止、MoviePassの「監視型」広告は成功するか

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既報のとおり、映画館での映画見放題サービスを提供していたムービーパス(MoviePass)は、共同創業者のステイシー・スパイクスのもとで経営再建を進めている。新しいサービスでは、会員がアプリで広告を閲覧すれば、映画館で映画を見るのに使えるクレジットを獲得できる仕組みにする。ただ、その際に利用者は目の動きを追跡されることになる。

新たに導入する「PreShow」という機能では、スマートフォンなどのカメラを用いたアイトラッキングによって、画面を見ている間は広告動画が再生され、見るのをやめると一時停止する。

スパイクスは先月の記者発表会で、PreShowは「ブランドとの交流を生み出すもの」だと説明し、映画などの作品内にブランドや商品を露出させる「プロダクト・プレイスメント」と呼ばれる広告の延長に位置づけた。

ムービーパスのクレジットシステムには、興行がふるわない日や時間帯に映画館に客が入るようにするのをあと押しする狙いがある。たとえば、プライムタイムに上映される人気映画には多くのクレジットが必要になるようにし、昼間に上映されるそれほど人気のない映画の場合は少ないクレジットでも見られるようにするという。

ムービーパスは、一時は月10ドル(約1160円)ほどで映画館に通い放題にして人気を集めたが、やがて経営が立ち行かなくなり、2019年にサービスを停止した。スパイクスは前年に会社を追われていたが、2021年11月に1万4000ドル(足元のレートで約160万円)でムービーパスの資産を買い戻すことを裁判所から認められた。

米国の映画館は新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)で落ち込んだ客足が戻ってきており、大手のリーガル・シネマズやAMCエンターテインメントなどはサブスクリプション(定額課金)サービスも始めている。米国内にはおよそ4600カ所の映画館があり、年間売上高は合計でおよそ180億ドル(約2兆1000億円)にのぼる。

PreShowによってムービーパスを立て直すというのはよいアイデアなのではないか。「目の離せない」新サービスの開始は2022年夏の予定だ。

編集=江戸伸禎

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