ホワイトハウスの声明によると、暗号資産をめぐるリスクへの対処や潜在的便益の活用に向けて、金融安定や不正防止、金融包摂、投資家保護にかかわるさまざまな措置を政府機関に指示する。暗号資産に関する政府全体規模の政策としては初めてのものとなる。
大統領令では、米国版の中央銀行デジタル通貨(CBDC)、いわゆる「デジタルドル」の研究開発に、緊急性の高い課題として取り組むことも要求。ただ、試験事業などの具体的なタイムテーブルに踏み込んでいない。
新たな規制は打ち出していないものの、暗号資産がもたらすシステミックリスクの特定・軽減や、規制の抜け穴を防ぐための政策提言のとりまとめを金融安定監視評議会(FSOC)に求めている。また、政府機関がデジタル資産技術を政策や研究開発などにとり入れるのに役だつ枠組みの策定を商務省に指示する。
今回の大統領令をめぐり「責任あるイノベーション」に言及したジャネット・イエレン米財務長官の声明がオンラインで掲載されたあと、9日未明にはビットコインが8%高、イーサが5%高となるなど主だった暗号資産の価格は軒並み急騰した。この声明は本来は9日に発表される予定だったとみられるが、8日に一時公開されていた。
デジタル資産の取引を手がけるグローバルブロックのアナリスト、マーカス・ソティリウーはバイデンの大統領令について、「比較的穏健」なもので暗号資産市場に「ある程度の明確さ」を与えたと評価。暗号資産をめぐっては規制強化をめぐる懸念からこのところ投資家心理が悪化していたが、米国の規制の行方について「前向きな兆候」を示すものになったとコメントした。
バンク・オブ・アメリカによるとデジタル通貨は世界の中央銀行の9割近くの中央銀行が積極的に検討しているが、米連邦準備制度理事会(FRB)は「最初にやる必要はない。正しくやる必要がある」(ジェローム・パウエル議長)とこれまで慎重姿勢をとってきた。大統領令ではデジタル通貨の研究継続や政府による検証への支援をFRBに求めている。