「自動車をつくる人が燃費を気にするように、半導体を扱う人に電力を気にしない人はいない」。GPU(画像処理半導体)を用いた計算力を提供する、モルゲンロット(Morgenrot)代表取締役の井上博隆はそう語る。GPUは、3D画像処理や、AIのディープラーニングなどの演算に使われる半導体。稼働する間、電子レンジの数倍の電力を消費する。
同社は、世界各地で風力や太陽光発電所を展開する、ユーラスエナジーホールディングスと連携。発電所の近くにコンテナ型のデータセンターを置き、廃棄される余剰電力で動かす。
コアにあるのは、井上が開発した分散型処理技術だ。計算を複数のサーバーに割り当てて処理することで、従来は、スーパーコンピューターなどを使用する計算を、低コストかつ短時間で行う。
また、世界の複数箇所のデータセンターに計算を分散。その際、余剰電力を保持する場所に割り当てることで、再生可能エネルギーの「供給の不安定さ」をカバーする。半導体と再生可能エネルギーの問題点が補い合えるのだ。
北海道大学とは物体の内部構造を3Dモデルで可視化する共同研究を行う。大規模な画像処理に対し、GPUの性能を引き出せるよう計算を最適化し、分散型処理に落とし込む。半導体の能力を最大化し、処理速度を向上させた。
目下、世界は半導体不足に喘いでいる。電力を有効活用でき、かつ半導体を効率化する技術に期待できることは多い。
モルゲンロット◎3D動画生成を行うためのクラウドレンダリングSaaS「RenderPool」を提供。CGアニメ「BIOHAZARD:Infinite Darkness」などで使用される。そのほか大学やディープテックベンチャーへのR&D支援などを行う。2021年4月から、再生エネルギーの余剰電力でコンテナ型データセンターを動かす事業に着手。