先月末にロシアがウクライナに軍事侵攻して以来、米国に対するロシア側からのサイバー攻撃は確認されていない。だが、ゴールドマンのヤン・ハツィウス率いるエコノミストらはリサーチノートで、国の支援を受けた昨年のサイバー攻撃のうち6割近くにロシアが関与していたとされることも踏まえると、現在の緊張激化によって悪意あるサイバー活動が行われる可能性は高くなっていると分析した。
米国土安全保障省によって米国の経済や国家安全保障にとってきわめて重要と位置づけられている16部門のなかでも、エネルギーと金融サービス、運輸はその経済的な重要性の高さからとくに大きな危険にさらされているとハツィウスは指摘している。
リサーチノートでは政府主導のサイバー攻撃について、従来は知的財産や機微な財務計画、戦略情報などが狙われてきたが、重要インフラが標的にされた事例もあると説明。ウクライナが先月、過去最大規模のサイバー攻撃に遭い、大手金融機関のシステムがロシア側によってハッキングされた事件にも言及した。
ゴールドマンは、米国の重要インフラを狙ったサイバー攻撃が実際に起きるとは考えにくいとしながらも、技術的には可能で「きわめて破壊的」なものにもなり得ると指摘。米北東部の電力網が攻撃され、域内15州で停電が発生した場合、経済損失は2500億〜1兆ドル(約29兆〜116兆円)にのぼるとの試算も示した。
ハツィウスは、米国は「デジタル技術への依存度が高い」ためサイバー攻撃にさらされやすいとする一方、民間によるサイバーセキュリティーへの手厚い投資や厳格な規制、充実した高等教育のおかげで、こうした脆弱性は緩和されているとの見方も示した。