この研究では、マラリアなどを防ぐために蚊と戦うなかで見落とされていた問題が浮かび上がったかたちだ。マラリアは、マラリア原虫をもった蚊に刺されることで感染する病気だが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による医療体制の混乱で、感染者や重症者が増加している。
研究チームは、熱帯地域と亜熱帯地域でよく見られる2種類の蚊について調査した。ひとつは「ネッタイイエカ」という、鳥マラリアやジカウイルス、ウエストナイルウイルスを広める蚊。もうひとつは「ネッタイシマカ」という、デング熱や黄熱を広める蚊だ。
蚊は、殺虫剤のにおいと、殺虫剤に接触したときのマイナスの影響を関連付けることを学習した。そして、殺虫剤のにおいがする場所に降り立って吸血することを自ら抑制したと、研究チームは説明している。
実験では、殺虫剤を付着させたネットを用意し、その上をネッタイシマカに飛ばせ、吸血できる機会を与えた。その結果、殺虫剤を避けるよう条件付けられた蚊は、条件付けられていない蚊と比べて、生存確率が3倍に上がった。
近年、殺虫剤に対する蚊の耐性が高まっている。こうした変化について、蚊の認知力を見落としていたことを研究チームは突き止めた。
しかし、この研究に参加した、英キール大学応用昆虫学・寄生虫学センターのディレクター、フレデリック・トリペ(Frédéric Tripet)はABCニュースに対し、遅効性のある殺虫剤を新たに開発すれば、蚊は殺虫剤に接触した後に生き延びても、そのにおいと嫌な経験を関連付けることを学習しないだろうと述べた。また、殺虫剤に蚊を引き付ける香りをつければ、学習を妨害できるという。
蚊は、多くの病気や寄生虫を拡散させる原因で、なかでもマラリアが知られている。世界保健機関(WHO)によると、2020年にはマラリア感染者が世界全体で2億4100万人に上った。感染は世界各地で起きているが、最も蔓延して多くの死亡者を出しているのがサハラ以南アフリカだ。