航空優勢をどちらが握るか 元陸将補が占うウクライナの戦況

2022年3月6日、ウクライナのイルピンでパトロール中のウクライナ軍兵士たち(Photo Laurent Van der Stockt pour Le Monde/Getty Images)

ロシアによるウクライナへの全面侵攻から9日で、2週間が経った。ロシア軍は当初の軍関連施設への精密攻撃から、民間施設も含む全面攻撃に舵を切ったように見える。限られた情報のなか、現在の戦況をどう分析すれば良いのか。陸上自衛隊中央即応集団司令部幕僚長などを務め、『自衛隊は市街戦を戦えるか』などの著書がある二見龍元陸将補は「航空優勢をどちらが握るのかが焦点になる」と語る。

ロシア、ウクライナ両国を含め、世界中のメディアがウクライナ情勢を報道している。ただ、ロシア軍とウクライナ軍による組織戦闘の映像は流れてこない。二見氏は「ロシア、ウクライナ両軍ともに手の内を見せたくないから、映像も流れない」と語る一方、「ウクライナ軍はロシアとの重戦力との戦い、地雷や対戦車火器による防御を行い、進出してくるロシア軍を食い止めているのではないか」と語る。

二見氏によれば、サイバー戦を巡り、ロシアがウクライナの頑強な抵抗に遭っている様子がうかがえるという。「ロシアは2014年のクリミア併合の際、メディアやSNSにサイバー攻撃をかけて、ロシアに都合の良い情報を流して、住民のコントロールに成功した。今回は、ウクライナがロシアの自由にさせていない」という。

キエフ中心部では1日、テレビ塔がロシア軍と思われる攻撃を受けた。それでも、ウクライナではテレビやラジオの放送が続いている模様だ。ゼレンスキー大統領らウクライナ政府高官も連日、テレビなどを通じてメッセージを全世界に発信している。二見氏は「クリミアのようにロシア軍に有利な情報がどんどん流れる事態に陥っていない。相当、ITに強いメンバーが対抗策を練っていたとみられる。情報戦の不調は、ロシアがキエフやウクライナを早期に陥落させられない原因の一つではないか」と語る。

ロシアは確かに徐々に戦術を変えているように見える。主要都市では、民間施設を含む無差別な攻撃が始まっているようだ。ロシアのプーチン大統領は核兵器の使用も辞さない考えを示している。ロシア国防省は6日、北大西洋条約機構(NATO)加盟国などを念頭に、ウクライナの軍用機の駐機を認めたり、ロシア攻撃のために空域を利用させたりする行為を参戦とみなす考えを示した。
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文=牧野愛博

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