キャリア・教育

2022.03.09 17:00

「戦略的反射神経」の時代


これは、戦略というものを「理論」として議論するのではなく、「現実」と格闘しながら実行してきた人間ならば、誰もが納得する真実であろう。
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そして、これからの時代には、この「戦略的反射神経」と呼ぶべき能力が、ますます重要になっていく。なぜなら、年々、変化が加速していく現代においては、新事業を巡る技術や商品、市場や社会の環境も、日々、急速に変化していくからである。

それゆえ、筆者は、この時代に求められる戦略思考を、「波乗りの戦略思考」と呼んでいる。

すなわち、サーフィンというスポーツが、刻々と変化する波を、反射神経によって乗りこなしながら、目的の方向に進んでいくものであるように、これからの時代の戦略思考は、「戦略的反射神経」による「波乗りの戦略思考」に向かっていく。
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しかし、それにもかかわらず、いまだに、古い戦略思考で新事業に取り組んでいる企業も少なくない。それは「山登りの戦略思考」と呼ぶべきものである。山登りにおいては、地図を広げ、頂上までのルートを定め、そのルートを計画的に登っていくが、現代の市場や社会は、その地図や地形そのものが刻々変化している状況であり、ルートも臨機応変に変化させていかなければならない。

この「波乗りの戦略思考」と「戦略的反射神経」の考えは、2001年に上梓した拙著『まず、戦略思考を変えよ』で語ったことであるが、20年を経て、こうした思考は、ますます重要になっている。

では、どうすれば、この「戦略的反射神経」を身につけることができるのか。

もとより、こうした高度な能力を身につけるための王道は無いが、一つ大切なことを述べておこう。それは、戦略思考とは「最高のアート」であると覚悟することである。それは、身体感覚と直観判断を駆使した「一回性のアート」に他ならない。

そのことを覚悟したとき、目の前の戦略的盤面が、輝いて見えてくるだろう。


田坂広志◎東京大学卒業。工学博士。米国バテル記念研究所研究員、日本総合研究所取締役を経て、現在、多摩大学大学院名誉教授。世界経済フォーラム(ダボス会議)Global Agenda Council元メンバー。全国7100名の経営者やリーダーが集う田坂塾・塾長。著書は『運気を磨く』『直観を磨く』『知性を磨く』など90冊余。

文=田坂広志

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田坂広志の「深き思索、静かな気づき」

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