サーキュラリティを考慮したノートパソコン
手本として注目すべきプロジェクトの一つに、循環型材料・修理可能性・再利用を優先したノートパソコンの再構築に焦点を当てた米デルのエンジニアリング・設計イニシアチブ「Concept Luna(コンセプト・ルナ)」がある。
同イニシアチブを通じて米インテルと共同でつくられた概念実証プロトタイプは、ほかのノートパソコンとほとんど違いがないが、サーキュラリティを考慮した多くの微調整が施されており、もし商業化されれば(現在検討中)間違いなく変化をもたらすだろう。
プロトタイプの特徴は次のとおりだ。
・ネジの数を大幅に減らした。分解や修理をする際、パソコン内部のパーツを確認するのに外す必要のあるネジは、わずか4本だ。(10分の1に削減)
・従来の接着剤を使用していないバイオベースのプリント基板を採用した。接着剤は水溶性ポリマーを原料としているため、リサイクル業者は金属などの回収可能なパーツを基盤から簡単に分離できる。
・マザーボードの配置を変更し、小型化した。マザーボードの総面積を75%縮小しただけでなく、トップカバーに配置し、修理や部品交換をより簡単にできるようにした。(放熱性にも優れている)
・パームレストとキーボードを簡単に分離できる設計を採用した。当然のことながら、パームレストとキーボードは、ノートパソコンで最も頻繁に交換されるパーツだ。
誤解を与えないように付け加えると、これらの機能は現時点で、デルの特定の製品に搭載されているわけではない。しかし、将来的には商業化の可能性を見極めながら、一部、あるいはすべての機能が組み込まれるかもしれない。
同社のデザイン・ストラテジストであるDrew Tosh氏は、チームがどの材料を試してみるかを決定する際、プロジェクト全体を通して耐久性を重視したと語ってくれた。「当チームは、できる限りの手段を講じました」とTosh氏は話す。
このプロジェクトに携わるエンジニアらは、インスピレーションを受けるため、電子機器の分解施設を訪れた。彼らは、持続可能な材料の専門家らに相談しながら、プロトタイプに使用する材料も選んだ。その一例として、Concept Lunaで使用されているアルミニウムは、水力発電で製造する工場から調達している。
デルのノートパソコン製品マーケティングチームは、このコンセプトパソコンを評価し、どの機能を実際の製品ロードマップに追加するかを検討する。