ソーラーパネルの設計上、ガラスからカドミウム・ガリウム・ゲルマニウム・インジウム・セレン・テルルなどの貴金属に至るまで、さまざまな部品の分解・回収は複雑なプロセスであることが、この調査報告書で判明した。ガラスやアルミニウムを売却しても経済的なメリットがないため、ほとんどがシュレッダーにかけられるか、埋立地に運ばれる。
調査報告書が最初に公開されて以来、この事実に大きな変化はない。しかし、米アリゾナ州立大学のプロジェクトでは、太陽光発電装置からシリコンや銀などの材料をより簡単に、かつ経済的にもメリットがある方法で回収できるソーラーリサイクルプロセスを構築しようとしている。
同プロジェクトに携わる研究者らは2021年12月初旬、先進製造におけるサーキュラーエコノミーへの移行の推進に焦点を当てたエネルギー省のプログラムの支援のもと、48万5000ドル(約5600万円)の助成金を受け取った。ソーラーパネルメーカーの米ファーストソーラーも資金調達を開始しており、ほかにも一部の太陽光発電装置メーカーやリサイクルに関するイニシアチブが資金援助を受けていることは、注目すべき点だ。
風力タービンブレードの運命は
風力タービンについても同じような問題に直面している。そのため、2021年に最も読まれた『GreenBiz』の記事トップ25のなかに、シニアエネルギーアナリストのSarah Golden氏が執筆した、巨大な風力タービンブレードが軸から取り外された後の運命に関する記事があったことに、私は驚かなかった。
EUでは、取り外されたブレードは焼却されたり埋め立てられたりする。リサイクルするという選択肢はあまりないが、デンマークに本拠を置くØrsted社のように、事業で使用されなくなったブレードの部品を回収・リサイクル・再利用することを公約している大手デベロッパーも存在する。
Ørsted社は次のように報告している。「現在、風力タービンの85%から90%はリサイクルできますが、風力タービンブレードは軽量でありながら耐久性があり、分解しづらい設計であるため、依然として課題となっています」
そこには「設計の優先度」の問題があるのだ。
よりクリーンな経済に移行するために早急に必要とされる気候テックも含め、世界で流通している製品のほとんどは、寿命を迎えたときのことを考慮されていない点は言うまでもなく、そもそもサーキュラリティを念頭に置いて設計されていない。しかし、気候テックの専門家らにとってのインスピレーションになるような変化の兆しが現れている。