実は、前述したチャブは、バークシャーの投資ポートフォリオには含まれていない。スイスに本社を置くこの保険持株会社は、バークシャーの中核をなす非公開企業、ガイコと直接競合する企業だからだ。
株式が公開されている保険会社の中では、チャブは王者と言える。887億ドルという時価総額は、損害保険会社の中では最大だ。さらに、同社は2021年第4四半期に、アジア太平洋の主要7市場でシグナが所有する保険資産を買収することで合意した。買収総額は57億5000万ドルで、すべて現金で支払われる。この買収により、チャブが業務を展開する国と地域は54に達し、その業務領域も、損害、農業、商業、生命、再保険の各保険分野に広がった。
チャブの経営陣は2月2日、同社の中核をなす営利事業の利益率が記録的なレベルで推移していると発表している。また、損害保険分野では料率が2ケタレベルで上昇しているが、チャブはこれを保険料に転嫁できており、更新率も堅調なレベルを維持している。
損害保険分野の収益は13億ドルと、前年比で31%上昇した。本業でのキャッシュの出入りを示す営業キャッシュフローは、2021年第4四半期に26億ドルのプラスに達した。
こうして同社が手にしたマネーのかなりの部分は、自社株買いに振り向けられる見込みだ。SECへの提出書類によると、チャブの経営陣は2021年第4四半期、9億500万ドルを自社株買いに費やしている。同年7月のプレスリリースによると、チャブの取締役会は、50億ドル規模の自社株のスポット購入プログラムを承認しており、これは2022年6月までの期間で実施される予定だ。
より長期の投資を成功に結びつけるためには、規律と戦略が不可欠だ。だが、その実践は見かけ以上に難しい。特に、地政学上のリスクやインフレの懸念が前面に出ている今の情勢ではなおさらだ。ウォーレン・バフェットは投資家たちに対して、本当に成功を収めることができる投資戦略という贈り物を授けてくれたと言えるだろう。
チャブの株価は、株価収益率(予想PER)が12.7倍、株価売上高倍率(PSR)は2.2倍と割安な水準にある。また、配当利回りは1.55%だ。ゆえに長期投資家は、値上がり前にこの銘柄をロングポジションに加えることを検討すべきだろう。