「アルコールは心臓によい」は誤り 新調査で指摘

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1日に酒を1、2杯摂取することは、少なくともアルコールに関する一部の指針によると特に体に有害なこととは考えられていない。また中には、適度な水準の飲酒は心臓に効果的かもしれないことさえ示している調査もある。

米疾病対策センター(CDC)が推奨している飲酒量は、男性が1日2杯まで、女性が1日1杯までだ。しかし35万人以上を対象とした新たな調査からは、アルコールの摂取は少量であったとしても心臓血管疾患のリスクを上昇させることが示されている。

欧州臨床栄養代謝学会(ESPEN)の公式ジャーナル「クリニカル・ニュートリション(Clinical Nutrition)」には先日、生物医学の大規模データベースであるUKバイオバンク(UK Biobank)の大規模な調査が発表された。

同調査では英全土の22のセンターからデータが集められ、飲酒した33万3259人と飲酒しなかった2万1710人を平均で7年にわたり追跡し、健康とアルコールの消費について調べた。対象者の年齢は40~69歳だった。

こうした類いの調査では、飲酒により健康に何らかの変化がもたらされるかどうかを調べるため、飲酒する人と一度も飲酒したことがない人を比較する場合が多い。しかし、全く飲酒しない人の中には他の健康問題を理由としてアルコールを避けている人もいるため、こうした比較からは大きな誤解が生まれかねないことが今回の調査で示された。

同調査の2万人を超える「全く飲酒しない」準拠集団が慢性疾患を患っている確率は、飲酒する集団と比べて大半の疾患で高かった。そのため飲酒する集団をこの集団と比べた場合、飲酒する集団が心血管系イベントを経験しにくいように見えたのだ。

同調査の第一執筆者である英アングリア・ラスキン大学のルドルフ・シュッテ准教授は「疫学的根拠に組み込まれたバイアスは、アルコールの消費に関連する危険性を隠すか、過小評価してしまう。こうしたバイアスを取り除くと、たとえ少量であってもアルコールの消費が悪影響をもたらすことが明らかになる」と述べた。

研究者らはこの問題を解消すべく、対象者を飲酒量によって集団に分け比較した。その結果、飲酒量が多かった人は心臓病による死亡率が高いことが判明した。

これはビール、シードル、蒸留酒を飲む人に当てはまっていた。またワインを飲む人を分離して分析すると、冠動脈疾患と呼ばれる特定の病気を患う可能性がわずかに減ったものの、他の種類の心血管疾患には変化はなかった。
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翻訳・編集=出田静

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