経済・社会

2022.03.07 16:30

減速鮮明の中国GDP成長率目標、「30年ぶりの低水準」に

Photo by Kevin Frayer/Getty Images

中国政府は3月5日、今年の国内総生産(GDP)成長率目標を、過去30年で最も低い5.5%前後に設定した。同国は、消費の低迷や、新型コロナウイルスの度重なる流行、不動産市場の低迷など、多くの問題に直面している。

中国では、3月4日に全国人民代表大会が開幕し、約1週間に渡って会議が行われる。李克強首相は、5日に行われた会議で今年のGDP目標を発表し、経済の安定成長を最優先事項に挙げた。しかし、課題が増加する中、その実現にはこれまで以上の努力が必要だ。

アナリストらは、中国が2022年のGDP成長率目標を5~5.5%に設定すると予想していた。北京本拠の投資銀行Chanson & Co.でディレクターを務めるShen Mengによると、中国政府は消費や技術などのセクターを中心にさらなる景気刺激策を実施する意思を示しており、実際に上限規模の金額を発表しているという。

秋の共産党大会で異例の3期目を目指す習近平国家主席にとっても、経済安定の維持は極めて重要な課題だ。世界第2位の経済大国である中国は昨年、政府目標の6%強を上回る8.1%の経済成長を達成した。

北京本拠のコンサルティング会社Plenumの創設パートナーであるFeng Chuchengは次のように指摘する。「中国政府は、2つの政府活動報告の間でGDP成長率目標を0.5%以上引き下げたことがない。今年は、より野心的な目標を設定した方が、期待感や信頼感を高めるのに役立つ。しかし、消費者部門の不振と不動産市場の規制を考えると、5.5%はさらなる政策の緩和とインフラ投資の拡大を意味する」

しかし、野村證券のエコノミストであるLu Tingのように、悲観的な見方をするアナリストもいる。Luによると、中国のGDPの4分の1を占めるとされる不動産市場の急速な冷え込みに加え、莫大なコストがかかるゼロ・コロナ戦略が経済成長の重しになっているという。

Luは、3月2日に公表したレポートの中で、「2022年の年間GDP成長率予測を4.3%に据え置く。この値が実際のトレンドを反映していると思われる」と述べ、これまでに実施された金融緩和政策の効果が比較的薄いと指摘した。

中国は、他にも多くの問題を抱えている。香港では、1日あたりの新型コロナウイルス感染者数が過去最高の約6万人に達した。病床が逼迫する中、香港を離れる住民が増加している。また、ロシアによるウクライナ侵攻は金融市場の混乱や、コモディティー価格の高騰を招いている。中国政府はかつて、「ロシアとの協力に限界はない」としていたが、習近平は友好関係を見直すとの報道がなされている。

編集/翻訳=上田裕資

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