STORY 3 マーク・アンドリーセン (ベンチャーキャピタリスト)
iPhoneが世にお目見えする数カ月前、2006年秋のことです。スティーブ夫妻、そして妻と私で、ディナーに出かけました。シリコンバレーらしい爽やかな気候の夕暮れ、パロアルトのカリフォルニア・アベニュー沿いにあるレストランの外で、席が空くのを待っていました。
スティーブが「いいものを見せてあげます」と言って、ジーンズのポケットからiPhoneの試作モデルを引っ張り出しました。そして、私に新しいデバイスの特徴や機能について、一連の解説もしてくれたのです。
「すごいねえ」とか「いいねえ」とか一通り言ったあと、私は勇気を出して思ったことを言ってみました。当時、ブラックベリーの熱烈なファンであった私は、「物理的なキーボードがついていないことは問題にならないのかな。本当にスクリーンに直接打ち込むなんてことが受け入れられるのかな」と言ってみたのです。
すると、スティーブはあの、見つめられると穴があきそうな目で真っすぐに私を覗き込み、一言こう言いました。
「みんな慣れるさ」