「起業家=ロックスター」を生み出した4つの要因
人口913万人の小国がなぜ、かくも多くの起業家を輩出し、「スタートアップ国家」と称されるまでになったか?
イスラエル外務省イノベーション&ブランド・マネジメント統括として、国外にスタートアップを発信するラン・ナタンゾンほど、この質問を受けてきた人はいないだろう。彼は、その答えとして主に次の4点を挙げる。
1.「枠の外で考える思考」:限られた資源、少ない人口、周辺国との関係という枷が、国民にあらゆる角度から考えることを促してきた。
2.「起業家精神」:イスラエルには、「Chutzpa(フツパー)」という言葉がある。ヘブライ語で大胆さや厚かましさを意味するこの精神により、年齢や社会的立場を気にせずに接することができる。失敗にも寛容だ。
3.「多様性」:イスラエルはユダヤの文化的、宗教的、民族的なアイデンティティを同一にする移民の国だ。文化が融合する人種のるつぼで、これが豊富なアイデアにつながる。
4.「ネットワーク」:人口規模、気質や価値観もあってイスラエル人は横のつながりが強い。その距離は、「1次の隔たり」と言えるほどだ。
「イスラエルでは、起業家はロックスターなのです」と語るナタンゾンはそうした起業家の存在を国外に知ってもらうため、「省内でゼロからこの役職を作った」ほどだ。
その意味では、彼もまた“起業家”なのかもしれない。
世界の潮流に漏れず、AI(人工知能)スタートアップは多いものの、イスラエル政府の注力している、1.サイバー、2.フィンテック、3.スマート・モビリティ、4.デジタル・ヘルスケアの人気も高い。この領域からイノベーションを期待できるかもしれない。
ラン・ナタンゾン◎イスラエル外務省イノベーション&ブランド・マネジメント統括。国内のイノベーション・エコシステムと、国外の関係者をつなぐ役割を果たしている。議員スタッフ、エネルギー・インフラ省勤務を経て現職。エルサレム・ヘブライ大学MBA取得。