透明なブランドを、現代らしい新しい姿でプロデュース──TOYOTA COROLLA CROSS HYBRID Z

TOYOTA COROLLA CROSS HYBRID Z

トヨタの名車カローラが新しい姿を見せるカローラ・クロスにみるロングセラーモデルの再生。


カローラが1966年の初代発売以来、累計5000万台超の販売台数という。かつてカローラは、手の届く夢としてのセダン。そこを出発点に、ハッチバックやRVなど、市場の嗜好に合わせて多様化し、販売を伸ばしてきた結果だろう。

セダンに固執しなかったコンセプトが、ブランドをうまく無色化したのかもしれない。若めの世代にとって、カローラと聞いても、ぱっと具体的なイメージはわかないのでは。透明なブランドになったのがよかったのかも、と思えたのが、今回とりあげる「カローラ・クロス」である。

2021年9月にカローラのラインナップに追加されたSUVだ。「これからのカローラに求められる新しい姿を追求した」とトヨタ自動車が謳うとおり、カローラをロングセラーに押し上げたマーケットインの手法は健在だ。ただし、カローラという名前ゆえ、“いまさら”と遠ざけてしまっては、乗るべき機会を逸してしまうかもしれない。

カローラ・クロスは、しっかり個性をもっている。1.5m超の全高の車体に加え、ルーフレールと、バンパー、車体下部、ホイールハウスを縁どる合成樹脂製のクラディングがスポーティだ。

たんにスタイリングだけがカローラ・クロスの特徴ではない。最大の特徴は乗り心地にある。ひとことで言うと、えも言われぬ気持ちよさなのだ。

じっさい、サスペンションは設計の見直し、ボディとの緩衝材として大型ブッシュを使うなどして、足まわりに力を入れたという。市街地でも高速道路でも、ふわりふわりと足まわりが動き、ほかに類がないような乗り心地が体験できる。トヨタ自動車のエンジニアリングの底力を感じさせる出来だと思う。

日本のモノづくりはシーラカンス化して衰退したといわれるなか、クルマはがんばっている。その好個の例であるカローラ・クロス。いちど体験してみてほしい。



TOYOTA COROLLA CROSS HYBRID Z

ボディ外寸|全長×全幅×全高=4490×1825×1620mm
車両重量|1410kg
駆動形式|2WD(FF)
最高出力|72kW(98ps)
価格|2990000円
問い合わせhttps://toyota.jp/
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photographs by Tsukuru Asada(MILD) text by Fumio Ogawa

この記事は 「Forbes JAPAN No.091 2022年月3号(2022/1/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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