ライフスタイル

2022.03.06 12:00

990はプライドを表す数字。伝説のロードスターが足を鍛えて帰ってきた

坂元 耕二

しかし、今回の目玉は「キネマティック・ポスチャーコントロール」。このKPCは、1.5リッターのロードスターと2.0リッターのロードスターRFにも搭載されたけど、990Sの走りを中心に見てみよう。今までだとマツダは、ステア操作に対してエンジントルクを制御し4輪のグリップ性を高める「Gベクトリング・コントロール・プラス」を搭載してきているけど、今回採用されたKPCはブレーキシステムをより上手く活用して、コーナリング時に後軸内輪側のブレーキを軽くかけることでリアを沈み込ませて姿勢を安定させるというものだ。さて、その効果は?

走行中のロードスター

現行型ロードスターに乗ると、ロール角が大きく感じる時もあるし、コーナーでフワッとする場面もあった。しかしKPCのおかげでリアが浮かなくなったし、コーナリング中にフラット感は保っていられる。何よりもリアのどっしり感と安定が目立つ。これでステアリングがよりシャープに正確に切れることで、運転がより楽しくなったと同時に、より安全になったわけだ。重心が高いSUV系のライドコントロールにもKPCが効果を発揮することは容易に予想できる。確かに、リアはリフトしないし、より安定しているけど、乗り心地が犠牲にされてはいない。どの路面でも、うねりを吸収力が良くて滑らかなサスペンションフィールは嬉しい。

990Sは、132psの1.5リッターの4気筒が搭載されている。6MTと組み合わさった車重が軽いのでこのパワーで十分だけど、少しでも走る喜びを増やすため、ECUのスロットル開閉制御を若干ハイレスポンスの方向にチューニングしているおかげで、KPCと合わせて運転する印象がすっかり楽しくなった。

さて、990Sの内装はシンプルでスパルタンに決まっているのに対して、2.0リッター搭載の「テラコッタセレクション」のキャビンは全く違う世界に一新されている。写真を見るとわかるけど、シートには印象的なテラコッタ・カラーのナパレザーを使用。最近のマツダは室内の室内や素材の向上にかなり力を入れているけど、今回のタン色のシートはグーンと高級感をあげているし、シートの触り心地も2ランク上のスポーツカー的な雰囲気に変身。

室内の写真

今回の商品改良で言えることは、マツダはロードスターファンの全ての願望に応えている、ということ。とにかくライトウエイトでコーナリングを思う存分に楽しみたい人は990Sを選べばいいし、気持ちの良い高級な内装でゴージャスに乗りたい人なら、「テラコッタセレクション」のチョイスがある。乗る目的にもよるけど、289万円の990Sと、346万円からスタートする「テラコッタセレクション」のどちらを選びますか?

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
「ライオンのひと吠え」 過去記事はこちら>>

文=ピーターライオン

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事