労組結成の動き広がる米スタバ 他企業が学べる教訓

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米コーヒーチェーン大手スターバックスでは、労働組合結成の動きが少しずつながらも着実に広まっている。他企業の経営者は、自社の従業員が同じく労組結成に向けて動くことを懸念。スターバックスだけでなく、アマゾンやアップル、連邦議会議事堂でも労働組合結成の動きが出ている。

労組結成を目指しているのは、米19州のスターバックス60店舗の従業員で、同チェーンが抱える約9000店舗のほんの一部だ(なお、空港や食料品店が運営する一部のスターバックブランド店舗では、既に労働組合が組織されている)。スターバックス幹部はこの動きを懸念し、ニューヨーク州バッファローでは労組結成の防止に力を注いだ。

米国では、民間セクターの労働組合員の数が長年にわたり減少を続けている。労組組織率は1950年代、39%に達してピークを迎えたが、2021年にはわずか6.3%まで落ち込んだ。一方、公共セクターでは今も高く、2021年は33.9%だった。

民間セクターでの労組事情の移り変わりをみてみると、組合活動が現在直面する課題が浮き彫りとなる。工業分野での労組全盛期には、鋼鉄事業の給与は他の工業会社よりも高くなり、このコストは顧客に転嫁された。自動車企業は鋼鉄に高額を支払い、自社の組合労働者にも高い賃金を支払った。この費用はその後、自動車価格の値上げという形で消費者に転嫁された。

米国で販売されていた自動車の大半は、ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード、クライスラーの三大メーカーで占められ、3社とも同じ労組で、いずれも同じ労組のあるサプライヤーを利用していた。

米国よりも安い賃金の外国労働者を使う企業の輸入車が人気を集め始めると、自動車業界の労組は力を失った。海外の自動車メーカーはその後、保護主義による関税や割り当て制度を回避するため、米国内に工場を建設。こうした工場は当初、工業中心地に置かれ、労働者は大半が労組に加入していた。だが1990年代になると、サウスカロライナやアラバマ、ミシシッピ、テキサス、テネシーなど、労働者が組合員でなくても働ける州に工場が設置された。

組合に所属しない労働者の出現により、労組化した企業は市場シェアを失い、同業他社よりも大幅に高い賃金を払い続けられなくなった。消費者獲得争いにより、労組側は高い賃金と手厚い福利厚生を要求できなくなった。
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編集=遠藤宗生

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