ロシア・ウクライナ情勢に応じた日本の対応の是非を入管政策のみに絞り、昨年夏頃のアフガニスタン退避政策における諸外国との比較も交えて、解説してみたい。
結論を急げば、中長期的な意味での「親日派の増加」、日本企業・日本関連団体の海外事業展開における「優秀な現地職員確保」という国益が、この解説の中核的視点だ。
退避するウクライナ人は「難民」ではない
そもそも、今回のロシアによる軍事侵攻と無差別攻撃の被害のみを逃れて国外脱出したウクライナ人は、法的に言えば1951年の難民条約上の「難民」ではない。
難民条約の定義を言い換えるとこうだ。
難民とは、本国において何らかの差別(人種、宗教、国籍、特定の社会的集団、または政治的意見)を理由とする迫害のおそれがあり、本国政府による保護を期待できないため国外に逃れた者。
今回、ウクライナ国外に逃れた人は、基本的にロシア軍による無差別武力攻撃を逃れているのであって、ウクライナ政府による差別的措置を逃れているわけではない。つまり難民ではなく「紛争避難民」と呼ぶのが正確で、難民法ではなく国際人道法の下で保護の対象となる。
このことは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の難民認定基準ハンドブック(パラグラフ164)にも以下の通り、1970年代から一貫して述べられている。
「国際的又は国内的武力紛争の結果として出身国を去ることを余儀なくされた者は、通常は、難民条約又は議定書に基づく難民とは考えられない。しかしながら、これらの者はその他の国際文書、例えば戦争の犠牲者の保護に関する1949年のジュネーブ諸条約及び国際的武力紛争犠牲者の保護に関する1949年ジュネーブ諸条約に追加される1977年の議定書に規定する保護を受ける」
この「ジュネーブ諸条約」(国際人道法)の守護神として紛争避難民に緊急人道支援を提供しているのが国際赤十字社(ICRC)だ。
したがって募金などをするなら、ICRC(日本赤十字社のウクライナ人道危機救援金受付サイト)が最も適切だろう。