ロシア版グーグル「Yandex」創業者がビリオネアから転落

「Yandex」CEOのアルカディ・ヴォロズとウラジーミル・プーチン大統領(Mikhail Svetlov / Getty Images)

ロシア版グーグルと呼ばれるテクノロジー企業「ヤンデックス(Yandex NV)」の創業者でCEOのアルカディ・ヴォロズの同社の持ち株の価値は、プーチンがウクライナを攻撃した2月24日以降に60%以上も減少した。ヴォロズの保有資産は昨年11月のピーク時には26億ドルに達していたが、現在は5億8000万ドル(約670億円)に沈んでいる。

ロシアのハイテク株は、地政学的な混乱を受けて大きく下落している。ニューヨーク証券取引所とナスダックは2月28日、ヤンデックスやビデオゲームメーカーの「ネクスターズ」、オンライン求人サイトの「ヘッドハンター・グループ」、Eコマースの「オゾンホールディングス」、決済企業の「Qiwi」などのロシア企業の株の取引を一時停止した。

1997年設立のヤンデックスは、米国のナスダックに上場しているが、本社をモスクワに置くロシア最大のテクノロジー企業で、昨年11月時点の時価総額は300億ドル以上に達していた。しかし、現在の時価総額はわずか67億ドルに沈んでいる。

ロシア語の検索エンジン市場で60%のシェアを獲得したヤンデックスは、米国の大手に匹敵するテクノロジー企業として知られ、近年は、配車サービスの「ヤンデックス・タクシー」やフードデリバリー、自動運転分野でも存在感を示していた。

ジェフリーズのロンドン支社のバイスプレジデントのSebastian Patuleaは、ヤンデックスの財務内容に株価の下落を正当化する理由はなく、同社がロシアに対する制裁と地政学的リスクの犠牲になったと述べている。しかし、先行きはかなり不透明だ。Patuleaは、ヤンデックスを取り囲む資本コストの上昇や、為替レートの悪化が、ダウンサイドリスクをさらに高めるかもしれないと述べている。

Wood & CoのアナリストのIldar Davletshinも、ヤンデックスが今後多くの問題に直面すると述べている。ロシアの経済が崩壊すると、同社のコア事業のデジタル広告や配車サービスの収益は低下する。また、チップの供給が制限され、ルーブルの価値が下落することで、自動運転車やクラウド技術などの成長部門も資金不足に陥る可能性がある。

また、同社の株主のロシアの銀行VTBも制裁対象に指定されている。
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翻訳=上田裕資

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