ロシアのSWIFT締め出しは、欧州連合(EU)や英国、米国、日本、カナダが先週に打ち出していた。ロシアの商品輸出能力を削ぎ、ウクライナでの戦争の資金源にもなる外貨収入を細らせる狙いだ。一方でこの措置は、ロシア側の債務者が、ロシアの銀行をブラックリストに入れた外国にある銀行で支払いができなくなることも意味する。
国際決済銀行(BIS)のデータによると、台湾のロシア向け債権の残高は1億8400万ドル(約213億円)程度にとどまっており、対ロ制裁への参加は象徴的な意味合いが強そうだ。一方、韓国は17億ドル(約1970億円)、日本は96億ドル(約1兆1100億円)のロシア向け債権を抱え、とくに日本の残高は世界で5番目に大きい。
国・地域別でロシア向け債権の残高が最大なのはイタリアの253億ドル(約2兆9300億円)。フランスがほぼ同額の252億ドル(約2兆9200億円)で、以下、オーストリアの175億ドル(約2兆250億円)、米国の147億ドル(約1兆7000億円)と続く。オーストリアが上位に入っているのは、同国の銀行大手ライファイゼンのロシア現地法人が稼ぎ頭としてロシアで積極的に活動してきたのが一因だ。
オーストリアの地元紙シュタンダルトによると、オーストリアはエネルギービジネスでもロシアとの関係が深い。オーストリアは当初、ドイツやイタリア、ハンガリーなどとともにロシアのSWIFT排除に反対したと伝えられる。
ロシア側からの債権回収は容易ではないとみられるが、債務不履行(デフォルト)になった場合にどれほどの影響が広がるのかは現時点では不明だ。BISのデータに含まれる債権には、支払いの期日が迫っているわけではないものもある。
それでもクレディ・スイスのストラテジスト、ゾルタン・ポズサーは、2008年のリーマン・ブラザーズ破綻や、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)をきっかけとした2020年3月の流動性逼迫に似た事態も想定されると警鐘を鳴らしている。
EU加盟国や主要7カ国(G7)はSWIFTから排除するロシアの銀行に、ロシアの商品やサービスに対する代金を送ることも不可能になる。欧州諸国はロシアから輸入する天然ガスの支払いもできなくなるのではないかと議論になっているが、こうした決済を主に担っているガスプロムバンクは今のところ排除の対象にはなっていない。
いずれにせよ、欧州諸国はロシア以外からの天然ガスの調達を急いでいる。ドイツのオーラフ・ショルツ首相は、調達先の多様化に向けて北部沿海に液化天然ガス(LNG)ターミナルを2カ所建設する計画を明らかにしている。
ロシア向け債権額が多い国(2021年9月30日時点の残高)
イタリア(253億ドル)
フランス(252億ドル)
オーストリア(175億ドル)
米国(147億ドル)
日本(96億ドル)
ドイツ(81億ドル)
オランダ(66億ドル)
スイス(37億ドル)
(出所:BIS)