ブロックチェーン(分散型台帳)の解析を手がけるマークル・サイエンスによると、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ侵攻を命じた2月24日以降、ウクライナ政府やその軍を支援する非政府組織に関連づけられたウォレットアドレスには6万件近くの寄付があった。とくに3月2日には最多の1万件超に達した。
寄付には、イーサリアム・ブロックチェーンを基盤とする自律分散型組織(DAO)「ウクライナDAO」が2日に販売した、ウクライナ国旗の非代替性トークン(NFT)による収益650万ドル(約7億5000万円)分も含まれる。別のブロックチェーン分析企業エリプティックのチーフサイエンティスト、トム・ロビンソンによると、これまでに販売されたNFTとしては10番目に高額だったという。
エリプティックによれば、ウクライナ政府に直接関連づけられたウォレットアドレスには2日までに、ビットコインやイーサ、トロン、ポルカドットで約3400万ドル(約39億円)相当が送られた。イーサリアムやポルカドットの創設者ギャビン・ウッドが寄付した580万ドル(約6億7000万円)相当や、20万ドル(約2300万円)超相当の人気NFT「クリプトパンクス」も含まれる。ウクライナ政府は同日、ドージコインでの寄付も受け付け始めた。
仮想通貨の受け取りでウクライナ政府を支援している地元企業、クナ・エクスチェンジの創業者であるマイケル・チョバニアンは2日、仮想通貨での寄付のうち約1400万ドル相当分はすでに使われたことをツイッターで明らかにした。仮想通貨情報サイトのコインデスクのインタビューでは、寄付はウクライナの軍などによる装備品や食料、燃料の購入支援に充てられていると説明している。
マークル・サイエンスによると、ウクライナ側への仮想通貨による寄付の69%はイーサとビットコインが占めており、チョバニアンも兌換のしやすさから支出手段としてはこの2つが「望ましい」と述べている。
ウクライナ当局は2月26日に、ロシア軍との戦いを支援するための仮想通貨での寄付をツイッターで呼びかけた。ウクライナではこれに先だち、非政府組織などが数日で計500万ドル(約5億8000万円)相当超の寄付を仮想通貨で集めていた。ウクライナ議会は同月、仮想通貨の取引を合法化する法案を可決している。
ただ、ウクライナへの支援の大部分は伝統的な通貨を用いて行われることになりそうだ。国連は1日、ウクライナや、ウクライナから近隣諸国への難民への支援に17億ドル(約2000億円)が必要になると訴えている。