ただ、日本人はこの心理的安全性がある状態だけでは十分に議論しきれないこともある。
元々、日本人はディベートや議論に慣れておらず、「授業のあとにこっそり質問をする」と言われるように、大勢の前で声をあげるのが苦手なタイプだ。そのため、発言しても怖くないという土台の上に、「積極的に発言しよう」という後押しが必要になってくる。言い換えると、心理的安全性が担保された上で、その先にある「積極的に発言する空気」を作りだすことが実現できれば、より建設的な議論がオープンになされる状態になる。
そこで、「ありがとう!」が貢献する。この単純な一言が、「積極的に発言する空気」を作りだすのだ。誰かが何かをしてくれたときに感謝を伝えるタイミングだけではなく、一人一人の小さな行動すべてに感謝をしながら会話をスタートさせるだけで、議論は更に深まっていく。
これもまた、個の時代に求められる時代のリーダーシップ、「一人一人の才能を最大限発揮させる」ことにつながる。
そういえば、僕の上司とのミーティングもいつも「ありがとう!」から始まり、「ありがとう!」で終わる。「よい1日を!」「よい週末を!」も必ずついてくる。たとえ、話の内容が否定的なことであったり、難しい議論であっても、入口と出口は変わらないし、議論の途中の「ありがとう」も変わらない。このことによって、僕自身の積極的な発言が促されている。これが浸透している組織の生産性が上がるのは間違いないと思う。
最初は、言い慣れない、違和感を感じられそう、などと思うかもしれないが、気づけばまわりの「ありがとう!」が自然に増えているはずだ。リーダーシップとはこんなほんの小さなきっかけを作り続けることから始まるのだ。