キャリア・教育

2022.03.07 08:45

「ありがとう!」がもたらす心理的安全性の先にあるもの

鈴木 奈央

Getty Images

2月のある日、1日で聞いた「ありがとう!」の数を数えてみると63回だった。

この日は、オーストラリア、インド、日本、日本の中でも東京から四国にいる人などを相手に、合計で10のミーティングがあった。1回のミーティングあたり6回以上の「ありがとう!」を聞いたことになる。

この数を多いと感じるか、少ないと感じるかは、人それぞれなのかもしれないが、僕の経験してきた組織の中ではすごく多いように感じる。

ミーティングに招待してくれてありがとう、集まってくれてありがとう、意見を出してくれてありがとう、質問をありがとう、資料を用意してくれてありがとう、説明してくれてありがとう、ありとあらゆるシーンに「ありがとう!」がついている気がする。

こちらから教えてほしいことがあってセットしたミーティングでさえ、先に向こうから「今日は情報共有の場をセットしてくれてありがとう」と言われた。その影響を受けてか自分が「ありがとう!」という数も増えた気がする。



改めて考えてみると、これはただ気持ちのいい職場、働きやすいチームという以上の効用をもたらしてくれていることに気が付く。

・ 世界中、誰と話しても同じ価値観(もっと簡単に言うと「空気」)を共有しているという安心感と一体感
・ 発言の是非の前に、発言を感謝されるという心地よさ
・ それを見て、気軽に発言したくなる環境作り
・ そして受け入れられることで感じる自己肯定感

心理的安全性のある組織作りということが叫ばれて久しいが、その一歩先にある大切なことのヒントがここにある。

ハーバード大学のエイミー・エドモントン教授は、心理的安全性を「対人関係におけるリスクをとっても大丈夫だという共通信念を持っていること」と定義している。つまり、何か相手にとって不都合なこと、異なる意見だったとしても、議論のために躊躇なく発言できる状態をみんなが感じていることだ。
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文=西野雄介 写真=Getty Images

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